一級建築士試験

一級建築士試験に独学で受かった話①~試験の難易度と独学の賛否について~

筆者は一級建築士試験に“ほぼ独学”で合格しています。

独学というのはそのままの意味です。独りで勉強して独りで受験しました。つまり、資格学校に通わずに合格したのです。通信講座ももちろん使っていません。

自慢するわけではないんですけど、この試験に独学で受かり切るのは結構すごいことです。特に製図試験まで独学を貫いたというのは、筆者の周りには例がありません。

同じ体験をしてる人はネット上を探しても数例しか存在しないようなので、この体験はまあまあ貴重なんじゃないかなあと思い、記事に残そうと筆を執る次第です。

合格の判子

記事を書く上では、この試験に独学で挑む方々の参考になる情報、これを発信することを心掛けたいと思います。

どういう経緯で独学に挑み、どういう心理で勉強し、どう突破したのか、そのへんをなるべく詳しく書こうと思います。

たぶん熱が入って長文だらけになると思うので、試験勉強の息抜きとしてチマチマ読んでいただけると幸いです。

来年度から試験制度が変わるようですから、私の体験談はあまり参考にならないかもしれません。そのときはスイマセン。

まず本記事では、一級建築士試験の難易度を説明し、独学のメリットデメリットについて大まかに触れたいと思います。

一級建築士試験の難易度

一級建築士は難関資格の部類だと言われています。

その難易度を示す特徴がいくつかあるので、順番にご説明します。

試験の特徴①:合格率の低さ

一級建築士試験の合格率は大体以下のとおりです。

合格率
1次試験 16~19%
2次試験 37~41%
総合 10~13%

総合合格率は10~13%程度で、これは国家資格としてもかなり難しい部類です。

ケンカタくん
ケンカタくん

いわゆる”落とす試験”なんだね!

しかも、受験資格として実務経験が求められる(※)ため、建築士試験の受験者は全員が「建築が仕事です」って人たちです。専門外の人から見れば、受験者ですら「建築のプロですね!」って人ばかりです。

そんな専門家が年に30000人も集まり、その90%近くが落ちるわけですから、一級建築士が難関資格であることは間違いないと言えるでしょう。

2020年度から実務経験要件が撤廃されます。大学在学中の学生なんかも受けられるようになります。これが試験の難易度にどう影響するかは、まだちょっと分かりません。

 

試験の特徴②:学科試験の「広く深く」感

学科試験(1次試験)はとにかく難易度が高いです。

二級建築士の問題と比べてみるとよく分かります。どちらも○×で答える問題なんですけど、内容の深さが段違いです。

平成29年二級建築士試験
学科Ⅰ No17(5)

階段のノンスリップ(滑り止め)は、踏面と同一面とした。

平成30年一級建築士試験
学科Ⅰ No6(4)

階段の計画に当たり、階段の滑りには踏面だけでなく段鼻の滑りも大きく影響することから、滑りにくい段鼻材を採用することが望ましい。

問われているテーマはほぼ同じなのですが、一級建築士の方は”戸惑わせる単語”が多いですよね。

「段鼻って何だ!?」とか「段鼻の滑りは”大きく”影響するのか!?」とか、どうにかして受験生を転ばせようとする悪意意図が感じられます。

二級建築士が「広く浅く」なら、一級建築士は「広く深く」だと言えるでしょう。

 

試験の特徴③:設計製図試験の独特さ

建築士試験の最大の特徴が製図試験(2次試験)です。

設計⇒製図までを1日で行う試験です。

ブラックボックスな採点基準

とにかく厄介なのが採点基準が分からないことです。

マークシートや筆記試験と違い、図面なんてものは千差万別、100人が描いたら100とおりの図面が出来上がります。

それをどうにかして採点するのがこの試験なんですけど、具体的な採点基準が全く分かりません。

自分が落ちた理由が分からないなんてこともザラにあり、とにかく掴みどころがない試験です。

自分がやっていることが正しいのかどうかも自分では判断できないので、人を頼らないと勉強すらできません。「一級建築士には資格学校が必須」と言われるのはこのへんの事情のためです。

6時間30分・休憩ナシ

また、試験時間が長いことも特徴です。

一級建築士の場合、試験時間はなんと6時間30分。この長丁場を休憩ナシで行うため、体力勝負の性格もあります。

ちなみに、6時間30分が長いかというと全然そんなことなくて、6時間30分でも時間が足りなくなるような作図量を要求されます。

体力も精神力もとにかく消耗するので、筆者は2度と受けたくありません。

試験の特徴④:角番の過酷さ

この試験で語り草なのが2次試験落ちの存在です。

一級建築士試験には、2次試験で3回落ちたら1次試験から受け直すというルールがあります。

このとき、2次試験を2回滑って3回目の受験生のことを「あとがない人」という意味で角番(カドバン)と呼びます。

先述のとおり、この試験は1次試験からして合格率20%以下の難関ですから、角番で滑ったあとに再度1次試験を通れる保証はありません。資格取得が1年どころか2~3年遅れる可能性があるのです。これは人生設計にすら影響するレベルです。

ですから角番の人は「ここで合格するしかない…」というプレッシャーを強烈に感じ、異常な精神状態の中で製図に臨むことになります。製図試験の最中に泣き出す人も結構いるようです。(筆者も1人見ました)

この試験制度も2019年度まででして、2020年度以降は1次試験に受かれば一生有効らしいです。角番の恐怖が無くなるのは良いことだと思いますが、2次試験でずーっと受からない人も出てくることが予想され、また別の悲劇が生まれるんじゃないかなーと思ったり。

来年度以降の新試験制度では「1次試験合格後、5年間で3回、2次試験を受けられる」ようになりました。多少緩和されましたけど、角番のプレッシャーは今後も続くようです…

 

一級建築士試験 独学のメリット・デメリット

さて、そんなクソみたいな難しい試験に筆者はほぼ独学で合格しました。

最後に独学のメリットとデメリットを整理して記事を終えたいと思います。

独学のメリット・デメリット

メリット
→お金がかからない
→ノーストレス

デメリット
→サボれる
→情報が少ない
→友達ができない
→後悔する可能性がある

独学のメリット~お金がかからない~

独学のメリットはなんといってもお金がかからない点です。

資格学校の授業って、フルパッケージで通ったら50万円~100万円の世界です。
しかも1年で受かる保証はありません。2年3年かかったら、、、、、

新車1台分の授業料を払ったなんて体験談をよく聞きます。

会社によっては資格取得者にボーナスを出すとか、出世の面で優遇するとかがあるみたいなので、高い授業料をペイできる場合も多いと思います。

ただそれでも、独学で合格すればさらに100万円節約できると考えると、まあ大きなメリットですよね。

独学のメリット~ノーストレス~

資格学校は結構厳しいらしいです。

遅刻したら普通に叱られるし、居眠りしたら本気で怒られるし、宿題を忘れた日は「やる気あるのか!」と怒鳴られるそうです。まあいいことなんですけど、人によってはストレスに感じるかもしれませんね。

独学の場合、そういう外力とは無縁な環境でマイペースに勉強できます。疲労もストレスもあまり溜まりません。

独学のデメリット~サボれる~

独学はサボれます

学校という監督がいないのですから当たり前です。自分がその気になれば随時サボることが可能です。マイペースの負の面ですね。

合格のためには自律的に勉強に取り組む姿勢が必須だと言えるでしょう。まあそれは学校通いでも必須だと思いますけど。

独学のデメリット~情報が少ない~

資格学校は情報が多いです。

講師はプロですし、周りの受験生もいろいろ経験値がありますから、試験に必要な情報が受け身でも入ってきます。

誰もが不安に思う製図試験も、受験生同士がお互いに支え合って安心できると思います。

 

その点独学は最悪です。

自分から情報を取りにいかないと受験前の情報戦で劣勢に追い込まれます。

特に製図試験の情報なんて全然入ってきませんので、自分がどの位置にいるのかが全く分からない。

いくら勉強しても「自分には何か致命的な無知があるんじゃないか」みたいな漠然とした不安が拭い切れません。

筆者は試験当日までずーっと不安でした。

アンテナを高く張る意識と、不安に克つ胆力が求められます。

独学のデメリット~友達ができない~

資格学校では友達ができるらしいです。クラス単位の授業ですからね。

まあ、試験合格が目標なのに友達作ってどうすんだとは思いますが、合格したときに仲間と打ち上げっていうのは正直憧れました。

 

独学だと友達なんてできるわけありません。むしろ減ります。

休日は1人で家に引きこもっているわけですからね。あいつ付き合い悪いなーってなるでしょうね。

 

独学のデメリット~後悔する可能性がある~

これはまあ意識の問題なんですけど、独学で落ちた時に独学したこと自体を後悔する可能性があるよなあ、と思います。

一級建築士の試験って年に1回しかありません。さっきも言いましたけど、1回の不合格が向こう2~3年の人生プランに影響する場合があるのです。

だから殆どの人は試験対策にお金を出して学校に通い、自分でできる最大の準備をして試験に挑んでいます。

そんな中に独学で挑むって言うのは、まあなんていうか「自分は万全じゃない」という意識を呼んでしまうと思うのです。

落ちてしまった時、学校に通ってた人なら「これだけやってダメだったのか」って思うでしょうけど、独学の人は「学校に通ってたら受かってたかもな」という後悔をしてしまうかもしれません。不完全燃焼ってやつです。

所詮は”たられば”の話ですけど、年単位で人生に影響してくる試験なので、そういう後悔を抱いてしまったときのストレスは結構大きいだろうなと思います。

筆者は幸い2回目で受かったからいいんですけど、2回目も滑って3回目も独学で落ちた場合、「1回でも学校に通えば人生変わったかな…」という後悔は多分抱いてしまったと思います。(だから製図3回目は学校に通おうと思っていました)

受かった身として言えば、独学合格は全然可能なことです。資格学校の優位性なんて感じませんでしたから、「独学=万全ではない」という理屈は間違っていると思います。ただ、もし落ちてしまった場合に自分が後悔するかどうか、これは本当にその人次第だと思うので、ご自身でしっかり考えて選択するべきだと思います。

筆者の独学の経緯

筆者の合格までの経緯はこんな感じです。

2015年12月 試験に向けた勉強を開始
2016年 7月 1次試験合格
2016年10月 2次試験不合格
2017年10月 2次試験合格

1次試験は1発合格、2次試験は2回目で合格でした。

最初から最後まで“学校の授業”には1銭たりとも落としませんでした。

ただし、“模試”と”無料体験授業”だけは受けました。”ほぼ独学”を名乗るのはこのためです。

 

次の記事では、学科試験の独学に焦点を当ててお話をします。

一級建築士試験に独学で受かった話②~勉強時間と勉強方法~一級建築士を独学で合格した話。 今回は学科試験について思うところを述べようと思います。 学科試験は独学がオススメ 前回の記事で...