製図試験だって独学で受かることはあります。
実際、筆者は製図試験に独学で受かりました。
ただ、製図試験に独学で挑むことが賢明かと問われると、筆者は答えに困ります。
製図試験に独学で挑むのは無理ではないけど明らかに不利だからです。前回の記事でもそう言いました。
今回はその点を掘り下げていこうと思います。
Contents
独学の合格率は学校よりも低い
先に筆者の考え方から言っておきます。
受からないといけない事情があるなら独学は避けるべきです。
これから順番に説明しますけど、製図試験の独学にはどうしても不安定な部分が出てきます。
もちろん、学校に行っても落ちる人は落ちますし、独学でも受かる人は受かります。
ただ筆者の実感として、やはり学校に行った人の方が通りやすいと思うのです。正確なデータはありませんけど、独学の合格率が悪いのは、たぶん間違いないと思います。
だから、合格しないとマズい事情がある人は、学校に行った方が無難だと思います。
合格しないとマズい事情:例
- 職場からの圧力がある
- 出世に響く
- 資格がないと仕事ができない
- 今年までしか試験を受けられない
- 家族の協力が限界
筆者は、上のような事情があまり強くなかったので独学に踏み切れました。一番の理由はお金を節約したかったからですけど。
製図試験が独学不利な理由:独学のデメリット
独学製図のデメリットを挙げます。ここが本記事のメインです。
そのまま「製図試験を独学すべきでない理由」と読み替えて頂いても構いません。
一つでも納得する(自分に当てはまる)内容があったら、学校に通うべきだと思います。
自己採点ができない
練習問題が手に入らない
自分の位置が分からない
勉強時間を確保しにくい
勉強してますアピールがしにくい
順番に説明します。
自己採点ができない
致命的な欠点です。
製図試験の性質上、自己採点ができません。
だから自分で勉強しても手応えが掴みにくいです。自分の勉強方法が合っているかも分かりません。
一応、採点用のチェックリストを自分で用意して自己チェックする方法もありますが、本試験の採点基準がブラックボックスなので、最後まで自信が持てない作業になります。
これは独学に限った話ではありません。本試験の採点基準が分からないのは学校も同じなので、学校の採点基準(指導方法)だって正しいという保証が無いのです。そういう意味では独学も学校もあまり変わらないと言えます。
練習問題が手に入らない
筆者が感じる一番致命的な欠点です。
ご存知のとおり、製図試験は本試験の約3か月前に試験テーマが発表されます。試験テーマは毎年大幅に異なるため、過去問がほとんど通用しません。
そこで学校なんかはテーマ発表日からすごい勢いで予想問題を作るんですけど、それを利用できるのはもちろんそこの生徒だけです。
学校以外には問題を作れる人なんていないので、独学の人は問題難民になってしまいます。
だからといって、その年のテーマに沿わない問題、例えば過去問なんかに取り組むのは非効率以外の何物でもありません。
練習問題が無いと話にならないのが独学なんですけど、練習問題を手に入れるところから苦労するわけです。独学者の不利は明らかです。
最新の問題を自力で手に入れる工夫がないと独学に勝機は無いと言えるでしょう。
独学で一番困るのは問題不足
この点を筆者がどう攻略したかについては、別の記事で詳しく紹介したいと思います。
自分の位置が分からない
独学はとにかく自分の位置が分かりません。
別の言い方をすると、他人のレベルが全く分からないのです。
やってみると分かりますけど、これは本当に孤独を感じるというか、手掛かりが無さ過ぎて不安に駆られるものです。
学校だと、自分以外の受験生の練習答案を見る機会があるらしいです。筆者は、それは素晴らしい試みだと思います。
仮に自己採点ができなくても、他人の答案を見ることができれば、その人と自分とを比較することができるからです。
自分が劣っているのか、同じぐらいのレベルっぽいのか、それとも優れているのか、それぐらいは判断できることでしょう。
そういう機会が少しでもあると、勉強の張り合いが全然違ってきます。独学にはそれが無いのです。
これに関しては、合格者がどのぐらいのレベルなのかを知ることである程度補えるものがあります。いつか別の記事で、筆者が合格した時の再現答案を公開しようと思います。たぶんレベルが低くて安心すると思います。
勉強時間を確保しにくい
独学は勉強時間を確保しにくいという意見があります。
一級建築士の製図試験は6時間30分の長丁場です。
つまり、練習問題を1題やるのにも6時間30分かかります。
その後の自己採点も加味すると、1回あたり8時間ぐらいの勉強時間を確保する必要があります。
これはもう休日にやるしかないのですが、職場環境や家庭環境などによっては、8時間ぶっ通しで勉強するのも難しかったりします。
その点、学校に通うという名目があれば時間も区切りやすいと思いますし、学校に行ってしまえば絶対に丸一日勉強できます(させられます)ので、学校の環境は有利だと思います。
ちょっと筆者の考えを言います。長くて主観的で批判的な内容なので、不愉快な人は読み飛ばしてください。
上記のとおり、製図試験にはまとまった勉強時間が必要です。
そこで、長い勉強時間を確保できない人に「何回かに分けて問題を解く」ことをオススメする人がいます。
1日目は3時間でエスキスと記述をやって、2日目に3時間30分で製図と見直しをする…みたいな取り組み方です。
これは筆者の主観ですけど、その勉強法は遠回りです。効果が無いとは言いませんが、なるべくならやってほしくない取り組み方です。
なんでかというと、本番環境で問題を解くのに越したことはないからです。6時間30分を一気に勉強するのは、試験に必要な気力体力の醸成にもつながり、本番に強い体質を作ると思います。
また、独学は手に入る問題数が少ないので、1問1問を大切に取り組むべきだと思います。本番と違う環境で問題を解いてしまうと、せっかくの問題が無駄になってしまう。筆者はそう思います。
筆者は職場と家族の理解を得られたので、試験前に休みを潰して8時間ぶっ通しで勉強することができました。数少ない問題に、それぞれ本番と同じ環境で取り組むことができました。これは合格にすごく役立ったと思っています。
勉強してますアピールがしにくい
一級建築士試験では学校に通うのが当然という風潮があるため、「学校に通わない=ちゃんと勉強していない」と捉えられることがあります。
実際、筆者は上司から「あなた(学校行ってないから)勉強してないよね」というコメントを食らったことがあります。
まあ、学校に通ってる人と比べると宿題が無くて時間的に余裕がありますから、そう映るのも多少は仕方ないんですけど、やや心外に思った記憶があります。
とにかく、学校に通わずに試験に落ちるのは努力不足と映りかねないので、気を付けましょう。
製図試験を独学するメリット
デメリット、いかがだったでしょうか。
何回も言いますけど、筆者の立場は「製図独学は可能だけど、積極的にオススメはできない」です。
デメリットを見て「あ、私には無理かも」と思った人は素直に学校を検討してください。
ただ、上に挙げたデメリットを見ても「私は独学で行くんだもんね」と思っている人は一定数いると思うので、そういう人のためにメリットも説明しておきます。
安い
製図独学のメリットはなんといっても「安い」。これに尽きます。
資格学校で製図の講義を受ける場合、大手で50万円、中堅で20万円、零細の通信でも8万円が大体の最低ラインになります。
ここに直前対策講座とかオプション講義とかが加わるし、オマケに通学の費用なんかも乗っかるので、最終的には一財産かかる感じになるわけです。
その点、独学は言うまでもなくノーコストに近いです。まあこれ以上の説明は不要でしょう。
筆者の場合、筆記から製図までの費用は総額で4万円ぐらいだと思います。(主にテキスト代と模試代。本試験の受験料と登録料は除きます)
自分のペースで勉強できる
独学は自分のペースでできるのでストレスが少ないです。
学校に通っている受験生から「宿題が~」とか「提出期限が~」とかいう悲鳴が聞こえることがあります。特に宿題が大変らしいです。
課題を沢山出すのが学校のやり方ですけど、それって自分で勉強できる人にとっては義務が増えるだけですから、まあ結構なストレスになるのです。
その点、独学にはそんな義務など全くありませんので、自分の気分を優先して勉強に取り組むことができます。これは本当にストレスが少ないので、筆者は「自分には向いていたな~」と思っています。
また、独学は通学時間が無いわけですから、時間的余裕も多くなります。
自律的に勉強できることが大前提ですけどね。
自分流の製図を通せる
これはメリットに書くかデメリットに書くか迷いました。
独学はとにかく自分の製図方法を貫けるのがメリットです。
ただそれは、クセを矯正してくれる人がいないというデメリットでもあります。
実際、筆者の製図手順は完全フリーハンドの超独創的なものです。
学校に通っている友人に見せたら「なんだよそれ」って呆れられた(そして感心された)ような製図手順です。本筋から言ったらメチャクチャなのかもしれません。
でも、筆者にとってはこれ以上やりやすい方法がありませんし、実務上も支障ないですし、そもそも合格したからそれでいいのです。結果論ですけど。
ただ、学校に通っていたら(講師にもよるでしょうけど)この方法は矯正されていたと思いますから、今の私の手順は独学のおかげで到達できたスタイルなワケですね。
これに関しては、いつか別の記事で筆者の製図方法を整理してみようと思います。
良く言えば「自分のやりやすい製図ができる」
悪く言えば「変なクセが付く」
まとめ:製図の独学はデメリットが大きい
いかがだったでしょうか。
製図試験の独学について、筆者が実感したメリットとデメリットを思いつくままに述べてみました。
繰り返しになりますけど、製図試験の独学はデメリットが大きいです。メリットもありますけど、デメリットの方が大きいと思います。
この記事を読んでデメリットの大きさにゾッとした方は、そのまま学校に流れていった方が多分幸せになれます。
一方、これでもまだ独学の方が自分に向いているよなあと思っている方は、もしかしたら本当に向いているかもしれませんので、そのまま頑張ってみていいかもしれません。ただし、家族や職場の理解を得るようにしてください。
筆者としては、学科試験を独学、製図試験を学校で…というのがベストバランスじゃないかと思いますけど。
ところで、製図試験の独学では「向いている人」「向いていない人」が割とハッキリ分かれると思っています。
次の記事では、もう一歩踏み込んで、そこの話をしてみようと思います。これまで以上に筆者の主観的な感想ですけど、よければお付き合いください。