家づくりの話をしていると色々な単語が出てきて混乱するでしょう。
設計・施工・監理って単語も難しいですね。これ専門用語です。
特に監理って聞き慣れませんよね。何でしょうねこれ。
この記事では設計・施工・監理の意味と区別をお話しします。
特に監理が分かりにくいと思うので、監理の意味に時間を割きますよ~。
Contents
「設計・施工・監理」は建築工事の3本柱
これは建築基準法で決まっていることなんですけど、
建物を工事するときは3人の責任者を決めないといけません。
具体的には、建築確認申請という手続きの中でこの3人を明示する必要があります。
- 設計者
- 施工者(正確には「工事施工者」と呼びます)
- 監理者(正確には「工事監理者」と呼びます)
よく出てくる単語だから覚えておいてね!
設計・施工・監理は相互監視の関係
この3人はお互いに独立した職務を持っています。
そしてこれが大事なんですけど、
この3人はお互いがお互いを牽制し合う関係にあります。
この3人がお互いに相手を見張り合うから工事がうまいこと進むのです。
だから筆者はこの3人を建築工事の3本柱と呼んでいます。

設計者・施工者・監理者の名前は工事看板で確認できる
工事現場には看板を立てなきゃいけません。
その看板の書式は建築基準法施行規則で細かく決まっていて、
ここにも3本柱の名前がはっきり出てきます。

出典:https://www.pref.miyagi.jp/soshiki/kentaku/071214hyoushiki-kaisei.html
ここに書かれるのは個人名じゃないといけません。名指しです。責任重いです。
現場監督は施工者でも監理者でもない
ちょっと脱線しますけど豆知識を。
上の看板の画像に工事現場管理者っていうのがありますね。
これはいわゆる現場監督ってやつなんですけど、
現場監督は施工者でも監理者でもなくて、法的な意味での役職ではありません。
法律で決まっている責任者というのは設計者・施工者・監理者の3人で終わりです。
法的な責任も3本柱よりずっと小さいです。
設計者・施工者・監理者の役割とは
何はともあれ、建築工事には3本柱が必要です。
法的な責任っていう意味では3本柱が主役です。
では、それぞれどういう役割に責任を負うのでしょうか。
順番に見ていきましょう。
設計者とは ~「図面を描くだけ」じゃない~
設計者は一番分かりやすいですよね。
建物を設計することが設計者の役割です。ああ分かりやすい。
ただ、ここでいう設計ってのは私の図面の技術的な部分に全責任を持ちますよって意味です。
建築基準法その他の法令に照らし合わせて全責任を負うと明言するのが設計です。

ですから、設計した建物で事故があれば設計責任を負います。
プランを考えました。間取りを考えました。だけでは設計とは言えないのです。
高度な専門性を有している必要があるので、設計者は建築士じゃないといけません。
施工者とは~元請 現場の総責任者~
施工者は工事をすることが役割です。
施工ってのは工事するって意味なので、施工者は工事する人です。そのままの意味です。これも分かりやすい。
といっても、施工者は施工の総責任者って意味合いが強いです。
実際に現場にいる必要はそんなにありません。
だから普通は工事する人の中で一番責任取れる人が施工者になります。
具体的には、元請け会社の代表取締役なんかが施工者になることが多いです。
施工者:○○建設 代表取締役社長 鈴木太郎 みたいな感じです。
この場合、鈴木さんは工事現場で作業する必要はないです。
ただ、工事のやり方がまずくて事故や不具合が起きたときは鈴木さんが責任を負うことになります。
施工者というのはそういう役回りの人です。
ちなみに、さっき出てきた現場監督ってのは、施工者の代わりに現場を担当している人のことです。
上の例でいくと、鈴木さんは社長だから現場に行かないんですけど、代わりに社員の佐藤さんを現場に送って仕切らせます。佐藤さんが現場監督に当たるわけです。

監理者とは~施工者の監視役~
最後に監理者の説明をします。
監理者は施工者を監視することが役割です。
ただまあ「監視」っていうのは表現が刺激的すぎますので、法律上の言い方としてはこうです。
- 工事と設計図書との照合及び確認
要するに施工者が設計どおりに工事しているかを見張るわけです。
発注者の代わりに技術的なチェックをする
なんで監理者が必要かっていうと、
施工者が裏で変なことをしても発注者には分からないからです。
例えば、施工会社がどうしようもなく悪い奴で、基礎の鉄筋の本数を少なくされたとして、あなたは気付くことができるでしょうか。無理ですよね。
あるいは、施工会社が少しおっちょこちょいで、設計図のとおりに断熱材を配置しなかったらどうでしょう。あなたには分かりませんよね。
そういうズルやミスを逃さないために、施工者とは違う立場から技術的なチェックをする人が必要なのです。それが監理者です。
別の言い方をすれば、技術的なことが分からない発注者の代わりに施工者をチェックしてくれる人です。それが監理者です。

ですから、工事後に欠陥が発覚した時は、施工者はもちろん責任を問われますけど、監理者も「おまえ本当にチェックしたの?」っていう感じで責任を問われます。
具体的にどういうチェックをするのか
監理者の仕事は要所要所で義務付けられています。
例えば、基礎の鉄筋の配筋が終わったとき、監理者のチェックが無いと工事を進めてはいけないことになっています。
また、工事が終わったら役所に届け出が必要なんですけど、その届け出は監理者が出すことになっています。
施工者が「工事終わったよ」と言っても、監理者が「うん終わったね」と言わないと役所に届け出できないのです。そういう仕組みになっています。
監理者は建築士じゃないといけない!
監理者には設計図を自分で読んでその詳細を理解する能力が求められます。
そのため、監理者は建築士でないといけません。
設計と比べると影が薄いですが、監理も建築士の独占業務なのです。
ちなみに、筆者の主な仕事も監理だったりします。
監理って言葉がとにかく分かりにくい
監理者ってのは、3本柱の中で一番分かりにくい役職です。
設計と施工は分かるけど監理は分からんって方も多いと思います。
筆者も社会に出て建築士の勉強を始めるまで全然知りませんでした。
これはやっぱり監理って言葉が分かりにくいせいだと思います。筆者のはタダの勉強不足です。
特に、管理と監理の違いは永遠の命題とも言えるでしょう。なんで同じ読みを当てちゃったんでしょう。ああ分かりにくい。
監理と管理は違う!サラカンとタケカン
最後にこれを説明して記事を終わりたいと思います。
工事には監理と管理の2つの「カンリ」があります。
それぞれサラカン・タケカンと呼びます。
工事ではよく使う言葉です。聞いたことあるって人もいるでしょう。
監理…サラカン(「監」のサラ(皿)から)
管理…タケカン(「管」のタケカンムリ(竹)から)
この2つはややこしいことに意味まで似ているのですが、まあよく読めば区別がつきます。
監理というのは監理者の仕事のことです。つまり、施工者とは違う立場から技術的なチェックをすることです。
管理というのは工事のマネジメントのことです。マネジメントっていうと幅広いんですけど、工程管理とか現場管理とか資材管理とかそういうもののことです。つまり、施工者の中の人がやることです。
まとめて言うと、施工者の外の人がやることが監理で、施工者の中の人がやることが管理です。
分かりましたかね。
まとめ
以上、この記事では設計・施工・監理の3本柱について説明しました。
これらの意味をしっかり理解していると、
自分が家を建てるときとかにフェーズごとの責任者が誰なのかを意識できて、
ああ、この施主は誤魔化せないな的な雰囲気を出せるかもしれません。
それでなくとも住宅界隈では頻繁に目にする用語なので、この機会にぜひ覚えておいてください。