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エアコンの原理を問題から探る
この記事は一般的なエアコンの原理を解説する記事です。
大前提としてルームエアコンは換気にならないことを知っている人に読んでほしいと思って書いています。
ルームエアコンが換気になると思っている人は、それは誤解ですので、
まずはエアコンは換気になりません!~よくある勘違い~でトリビアしてきてください。
「ルームエアコンは換気になると思ってるけどお前の記事なんか読みたくねーよ」とかいうヤンチャな人については、
それはもう取り組み方を全く間違っていますが私にそれを止めることもできませんので、カレーでも飲みながらゆっくりご覧ください。
【おさらい】エアコン+室外機だけの図には問題点があった
さて本題に行きます。
前回の記事でこんな図↓を紹介しました。

室内機と室外機は冷媒をやりとりしてるだけですよーっていう図です。
そしてこう言いました。
この図ではエアコンで最も大事な概念が表現されていません。
なんでしょうか。気になりますね。
本記事では、この問題点と改善方法について解説し、エアコンの仕組みをご紹介します。
へー、エアコンってこんな仕組みなのかー、作った人は頭良いなー。って思ってもらえると嬉しいです。
【解説】図の機械で冷房を運転してみる
どこが問題なのかをじっくり考えてみましょう。思考実験の始まりです。
具体的に考えるための条件を図に追記しました。
外気温30℃、室温35℃の状態です。ここから冷房をかける状態を考えてみましょう。

①冷媒が回り始めて冷たい風が吹く
エアコンをONにすると中の冷媒がグルグルと回り始めます。

外気温で30℃に冷やされた冷媒が室内機に運ばれて、
室内機を通過する空気を冷やします。
室内機からは30℃の風が吹き出ます。
一方で冷媒は温く(ぬるく)なります。
※正確に言うと、コレをやったら室内の吹き出しは32~33℃とかになります。冷媒と室内空気の熱交換がこんなに完璧には行かないからです。便宜のため30℃としています。
②温くなった冷媒は室外機で冷やされる

温くなった冷媒は室外機でまた30℃に冷やされます。
ちなみに、このとき室外機で何が起きているかというと、
風を当てて冷媒を冷やしているだけです。
やってることは扇風機と一緒ですね。高度なことは全然していません。
③室温が下がってくる
これをずーっと繰り返します。すると室温が下がってきます。

念のため細かく補足するとこんな感じです。

④室温が外気温と同じになる
室温は30℃まで下がります。
と、ここで問題にブチ当たります。
室温が外気温(30℃)と同じになると、それ以上冷えないのです。

何故こんなことになるかというと、
冷媒を外気温で冷やしているだけだからです。
30℃の外気温で冷媒を冷やしても、冷媒は30℃にしかなりません。
だから室温も30℃までしか下がらないのです。

【問題点】外気温までしか冷えない!
この方法だと室温が外気温までしか下がらないことが分かりました。
これでは冷房としての役目は全く果たせません。
ただの扇風機と同じになってしまいます。
前回の図の問題点はこういうところです。ご理解いただけたでしょうか。
【解説】エアコンがやっていること
さて、実際のエアコンではどのようなギミックで冷房を実現しているのでしょうか。
答えを見る前に、ご自身で少し考えてみてください。
もし答えが分かったらあなたは技術系の道に進むべきかもしれません。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
終わり!
ということで答えを説明します。
実際のエアコンの機能図
実際のエアコンの機能図を以下に示します。

今まで見ていた図との違いが分かるでしょうか。
そう、圧縮機と膨張機が追加されていますね。これが答えです。
どういうことか見てみましょう。
圧縮と膨張のお話 ~ちょっと物理学~
先にちょっとだけ物理のお話をします。
物理と言っても小学生の理科のレベルです。まあ聞いてください。
理屈はともあれ「まあ覚えてください」というタイプのものです。
圧縮とは
気体を圧縮すると温度が上昇します。
別の言い方をすると、空気をギューッと縮めると温度が上がります。
例えば、30℃の空気をギューッと縮めると、縮め具合によって45℃になったり60℃になったりします。

膨張とは
圧縮の逆です。
気体を膨張させると温度が低下します。
別の言い方をすると、空気をググっと引き伸ばすと温度が下がります。
例えば、30℃の空気をググっと引き伸ばすと、
伸び具合によって15℃になったり5℃になったりします。

このように、空気の温度というのは意外と簡単に操作できます。
押したり伸ばしたりすれば勝手に温度が上下するのです。
(筆者は小学生の頃に空気鉄砲を使って勉強しました。筆者の地域だけかな?)
圧縮と膨張で冷房を実現
圧縮と膨張の性質を応用したのがエアコンです。
では、圧縮と膨張をフル活用した冷房の原理を図示してみましょう。

これが実際のエアコンの原理です。よく見てください。
もう穴が開くほど見つめてください。
考えた奴は天才か!ってなりますから。
見ただけで意味が分かるなら、あなたは理科の勉強がよくできる人です。
分からなかった人のために補足した図も準備しました。

まあゴチャゴチャ書いていますけど、
一番大事なのは外気温と室温が一緒なのに冷たい風を出せている!ということです。
そもそもこの記事の最初の問題は
室温が外気温と同じになったらそれで終わり
という点にありました。
それが圧縮と膨張を駆使することで見事にクリアされたわけです。すごいですねー。
最強の発明 ヒートポンプ
この原理がすごいのは、自然の摂理をひっくり返している点です。
この世の常識として、熱というものは熱い方から冷たい方へと流れていきます。

外が暑ければ部屋も暑くなるのはそういうことです。
ところがエアコンの冷房は違います。
外がどんなに暑くても、冷房を付ければ涼しい部屋がどんどん涼しくなります。
熱を冷たい方から熱い方へ流すのです。完全に自然に逆らっています。

この最強の発明はヒートポンプと呼ばれています。本記事のタイトルにもあります。
ヒートポンプを使ったエアコンを空冷ヒートポンプエアコンとか言ったりします。
ヒートポンプの名前の由来
ポンプという言葉には
自然の流れと逆向きの動きをさせる機能
という意味があります。
これは、水を汲み上げるポンプから来ています。
水は下に落ちるものですけど、ポンプを使えば上がるからです。
これも自然の流れとは逆向きの動きですね。

エアコンも、本来とは逆の方向に熱(ヒート)を動かすので、
ヒート+ポンプでヒートポンプと呼ばれるのでした。
ヒートポンプの原理を文章でおさらい
以上、ここまでが今回の記事の主要なアレです。ありがとうございました。
ただ、図示中心の解説でしたので、「なんだかなあ」と消化不良な方もおられると思います。
そんな方向けにヒートポンプの機能的な流れを文章でダーッと説明して終わりにします。
理解があいまいな部分を文章で確認してもらえればと思います。
この図↓をベースに説明します。

まず、冷媒は室外機で外気温まで下がります。
外気温が30℃なら冷媒も30℃になると思ってください。
クドいようですけど、室外機でやっているのは扇風機と同じことです。
風(外気)を当てて冷媒を冷やすだけなので、冷媒が風(外気)より冷えることはありません。
次に、外気温まで下がった冷媒を膨張させます。
30℃の冷媒を2倍に引き伸ばして、15℃まで温度を下げます。
(ここでは冷媒の体積を2倍にすれば温度が半分になるように書いていますが、実際は膨張の方法によって変わってきます。詳しく知りたければ熱力学を学んでみましょう)
そして、15℃の冷媒を使って室内の空気を冷やします。
冷媒の立場からすると、室内の空気に温められますから、室内の空気が30℃なら冷媒は30℃になります。
(冷媒と室内空気の熱交換が100%の効率で上手く行った場合です。実際はこんなことあり得ません。冷媒と室内空気の温度が同じ(例えば22℃とか)になった時点で終わります。これを熱平衡と言います。)
こうして30℃になった冷媒ですが、今度は圧縮機で高温にされます。今回は50℃にしましょう。
ここで冷媒をわざわざ温めるのは、外気が30℃だからです。冷媒を30℃のまま外気に晒しても、外気も30℃なので何も起こりません。
冷媒を外気より温めることで、冷媒から外気に向けて放熱させるのです。ここで放熱させないで冷媒を膨張させると、冷媒が吸収した熱の逃げ場がないので失敗します。
もちろん、冷媒は無限に膨張させられるわけではないのです。たまには圧縮しないといけません。
こうして冷媒は外気温にまで下がり、また最初に戻ってサイクルが完成します。
お判りいただけたでしょうか。
結論:ヒートポンプを考えた人は天才。