さいきん、色々なハウスメーカーが「うちは高気密です!」と謳うようになってきました。
住宅の高気密化が進んでいるのです。
高気密は基本的には良いことです。間違いなく住環境を向上させるからです。とても文明的な発展だと思います。
ですが、高気密と聞くと身構える方が多いのも事実です。
特に「高気密は息が詰まるから嫌だ」という意見は根強くて、
鉄筋コンクリートなどで隙間なく固めた住宅に「息苦しさ」を感じる人も多いと聞きます。
実際のところ、高気密化は息苦しさにつながるのでしょうか。ちょっと考えてみましょう。
Contents
“高気密=息苦しい”は間違い
まず結論から言うと、高気密だから息苦しいというのは高気密を理解していないだけです。
単純に換気の意識が不足しているか、あるいは気のせいです。説明していきましょう。
高気密はたしかに換気不足になりがち
低気密の住宅では隙間風が換気として働きます。窓を閉め切っていても建材の隙間から空気が入り込み、それが24時間換気の役割を果たすのです。
一方、高気密になると隙間風が激減しますから、隙間風で担われていた換気量が不足することになります。
つまり、低気密住宅と比べるとたしかに換気不足になりやすい(息苦しく感じやすい)です。これは事実です。
低気密=隙間風換気
高気密≠隙間風換気
窓を開ければ解決する問題
ただ、換気不足は換気すれば補える話です。
窓を開ければいいだけです。

大事なのでもう一回言います。
窓を開ければいいだけです。
要は高気密になった分を意識的に換気すればよいのであって、
高気密だから息苦しいというのは元々の生活に換気の習慣が不足していただけなのです。
換気の習慣をつければOK。ただそれだけの話なのです。
高気密=換気が大事
“ただの気のせい”の場合も
また、住環境の感じ方には心理的な要素が関係してきます。
「この住宅は高気密だから息苦しい」と思いながら生活していると本当に息苦しく感じてくるのです。そういうものなのです。
十分に換気してもなお息苦しさを感じる場合、もしかしたらそれは気のせいなのかもしれません。
シックハウスの影響等も考えられるので、本当に体調を崩している場合は専門家に相談することをオススメします。
新築住宅には24時間換気が義務付けられている
現在の建築基準法では全ての住宅に24時間換気装置の設置が義務付けられています。
よくある換気装置はこういうやつ↓です。見たことあるでしょうか。

↑これは自然給気口というやつで、まあ要するに小さな窓です。
この窓は基本的にずーっと開けている想定で作られています。
トイレやキッチンの換気扇を使ったとき、この窓から換気扇まで風が流れる(換気される)ようになっているのです。

なので、さっき換気が足りないなら窓を開ければいいと言いましたけど、トイレやキッチンの換気扇を使うだけでも換気になるのですね。
高気密だからといって全く換気できないわけではないのです。換気ってお手軽なんです。
ちょっと横道に逸れます。
上の図のように「自然給気+機械排気」で気流を生むシステムを「第三種換気」と呼びます。
ほかに「第一種換気」と「第二種換気」というものもあって、そのうち「第一種換気」は住宅にも使われており、第三種換気のほぼ上位互換です。
詳しくは下の記事で解説していますので、興味があれば読んでみてください。

高気密化は必要なのか
さっきも言いましたけど、在来の低気密な住宅は隙間風で換気が成り立っていました。
隙間風とはいえ、曲がりなりにも換気が成り立っていたわけですから、「じゃあそれでいいじゃないか」と言う意見も出そうです。
低気密住宅は隙間風が勝手に換気してくれるのに、
高気密住宅は自分で換気しなきゃならないのは、
手間が増えてデメリットじゃないかと、そういうことです。
でもでも、高気密化にはその手間を補って余りある優位があります。
ていうか、低気密のデメリットがすごく大きいので、換気が多少めんどうくさくても高気密の方がいいのです。説明していきます。
「換気」という言葉にはそもそも「選択的な」というニュアンスが含まれます。隙間風のような「非選択的な」換気のことは単に「外気流入」と言ったりもします。ややこしいので、今回の記事では全部「換気」と呼ぶことにしています。
選択的換気のメリット
高気密住宅では意識的な換気を行う必要があります。(選択的換気)
選択式換気では、空気の流入をコントロールできるという点がメリットになります。
なんでそれがメリットになるかについては、コントロールできない場合のデメリットを見た方が早いです。↓
換気にはデメリットがある
換気というのは、室内環境にとって良いことばかりではないです。
換気のデメリットを以下に挙げます。
換気のデメリット
- 冷たい(熱い)外気による熱負荷
- 高湿度空気による結露
- 花粉などによる空気汚染
まあ要するに、換気で取り込む外気が人間に良いものばかりだとは限らないということです。
もちろん換気は必要なことなんですけど、こういうデメリットを最小限にするためにも、必要最小限の換気を目指すこと(選択的換気)が大切なのです。
低気密住宅はデメリットが大きい
というわけで、低気密住宅(隙間風換気)のデメリットは換気をコントロールできないことです。
外気ってのは悪さもしてくるんですけど、隙間風で入ってくる外気は防ぎようがありません。外気がどこから入ってくるかが全然特定できませんから、もうどうしようもないのです。
高気密住宅の場合は換気をコントロールできます。外気を取り入れるルートを限定できるので、そこにフィルターを仕掛けたり、まあ色々やりようがあります。
低気密住宅は換気を意識しなくてもいいから楽ですけど、
代償として熱気・冷気・湿気・花粉などをノーガードで受け入れることになるのです。
夏は暑いし、冬は寒いし、春は花粉だらけだし、しかも内部結露やら何やらで建物の寿命まで短くなります。
なんだか割に合わない話ですよね。
そのとおり、低気密ってのは割に合わないのです。お判りいただけたでしょうか。
やや極端なことを言えば、低気密住宅でクーラーを使うのは半屋外でクーラーを使うのと同じようなものです。それだけでもものすごく無駄というか、非効率であることが分かると思います。
ルームエアコンは換気にならない
ちなみに、家庭用のルームエアコンを付けても換気効果は一切得られません。
詳しくはコチラ↓の記事で述べています。

※全館空調は換気になる場合があります。
まとめ:高気密+選択的換気が最適解
いかがだったでしょうか。
高気密住宅にありがちな「息苦しそう」という懸念について議論してみました。
高気密住宅はたしかに換気量が不足しがちですけど、それは高気密なんだから当たり前のことであって、選択的換気で補えばいいだけの話なのでした。
むしろ、換気には結構なデメリットもあって、それを最小限に抑えられるという点で、高気密化(選択的換気)はメリットの方が大きいということなのでした。
高気密はメリットが大きい
というわけで、これから家を建てる方は高気密であればあるほど良いという考え方を基本にしましょう。まずはそれで間違いありません。
ただ、高気密を追い求めるとコストも当然上がるので、どの程度の気密性能で妥協するかという視点も現実的に必要になってきます。
この点についてはいつか別の記事で触れようと思います。
とりあえず今回は「高気密は全然悪いことじゃない。むしろ基本だ」ということを力強く述べたかったのでした。