住宅

家を建てるときに”工事監理者”に気を付けるべき理由

大事です。工事監理者

皆さんは工事監理者についてどの程度ご存知ですか。

あまり聞きなれない用語かもしれませんが、実はこれ、工事の責任者の1人です。

家づくりの現場においても工事監理者は(ほぼ)必置なのですが、

設計者とか施工者と比べると地味に影が薄いので、

あまり気にしたことないな…という方も多いかと思います。

 

ところが、工事監理者の仕事ぶりは皆さんの利害に直結します。

特に注文住宅を新築するときなんか、工事監理者の出来不出来で結果が大きく変わる場合があります。

だから工事監理者は慎重に選ぶことをオススメします。選べないにしても、工事監理者を意識して家づくりを進めるべきです。

ちなみに先に言っておくと、ハウスメーカーのグループ会社の監理者を提案されて「よく分からないんでそれでいいです」って適当に承諾するのが最悪です。

そこで本記事では、工事監理者を気にかけるべき理由をご説明します。

特にこれから注文住宅を検討している方には是非お読みいただきたい。よろしくお願いします。

では始めましょう。

監理者の仕事内容は設計・施工・監理の違いとは~建築工事の3本柱~に書いてあります。合わせてご覧ください。

工事監理者の仕事は施工者を見張ること

工事監理者の仕事は設計図のとおりに工事が進んでいるかを施工者以外の立場から確認することです。

要するに施工者の仕事をチェックする役割を担うのですが、その職務の性質上、監理者と施工者の関係性が重要になってきます。

監理者と施工者が利害関係にないこと

監理者が施工会社の利害関係者の場合は要注意

一般的に監理者と施工者が利害関係者であることは望ましくありません

もう1回言いますけど、工事監理者の仕事は設計図のとおりに工事が進んでいるかを施工者以外の立場から確認することです。

つまり、監理者は施工者に対して厳しい意見を言う立場です。

それがお互いに利害関係があると監理がナアナアになってしまう可能性があります。

施工者サイドの利害に無縁な人でないと本当に厳しい意見は言えません。

施工者「あー図面と違う施工しちまった。でも隠れる部分だし別にいっか」

監理者「(あっこれ図面と違う)あのーすいませんこれ図面と違うんですけど」

施工者「えーそんな細かいとこ見るの?アナタんとこウチのグループ会社だよね?工事が進まないとお互い困るんじゃない?」

監理者「(工事が遅れると私も怒られるかも…)あー次から気を付けてください」

施工者「工事が早く進むから助かるわー」

↑監理者と施工者が変に親しいとコンナコトになりかねません。

なんとなく場が収まっているように見えますが、1番損するのは施主です。

監理者は本当は発注者サイドの味方なのですから、
あなたの利益を最優先して施工者をぶっちめてもらう必要があります。

監理者と施工会社が繋がっているケースは多い

とはいえ、監理者と施工会社が密接に繋がっている場合が非常に多いのが現状です。

実をいうと、監理者と施工者の関係に対する法的な規制は一切ないのです。

監理者が施工会社の社員でも別にいいのです。罰則はありません。

監理者と施工者が独立している方がいいってのは建築基準法の目的を考えれば明らかなんですけど、監理者は建築士ならば誰でもいいというのが実情なのです。

ハウスメーカーは監理者とズブズブ

だからハウスメーカーなんてのは殆どが監理者を抱き込んでいます。

つまり、ハウスメーカーの監理者は大体がグループ会社です。

グループ会社じゃなかったとしても、

監理者からしたらハウスメーカーってのは大口顧客ですから、

監理者側がハウスメーカーの機嫌を損ねたくなくていろいろと忖度する可能性があります。つまり利害関係があります。

従って、ハウスメーカーが提案してくる監理会社なんてのは全部身内だと思った方がいいです。

ハウスメーカーの営業が「○○っていう監理会社を使いますね」って言ったら、

「身内同士で工事進めるのでヨロシク」って意味です。

 

そもそもの話、ハウスメーカーと話を進めていたら監理者のことなんて教えてくれません

なんかテキトーなタイミングで「監理者はこの会社にしますね」とかフワッと言ってオシマイです。どうせ分からないと思っているし、その方が都合がいいからです。

適正な品質管理の観点、つまり建築基準法の適正な運用から言えば、そんなもん承服しないの一択なんですけどね。

ちなみに、これはもうハウスメーカーが勝手に工事監理者を決める風潮があるからダメなのです。

業界全体の大きな流れとしてハウスメーカーの監理者抱き込みをやめさせることは難しいです。

監理者抱き込みのメリット

念のためフォローしておくと、ハウスメーカーの監理者抱き込みには一応メリットがあります。

安い

本来お金をかけて第三者監理を頼むべきところを身内で適当にやってくれるので、まあ要するに安上がりです。
ただし、そのコスト削減が顧客に還元されているかは要精査です。
「監理費って書いてあるけどどうせ身内で簡単にやるんでしょ?それにしては高くないか?ん??」とか聞けば営業はタジタジするかもしれません。

本筋で言えば、監理者の選定・契約は施主個人がやるべき仕事です。
当然手間がかかりますし、そのための勉強もしないといけません。
ハウスメーカーならそういった仕事をワンストップで勝手にやってくれるので、顧客としては楽は楽です。

責任の所在が明確

設計者も監理者も施工者も同じ会社だとすれば、家に欠陥があったときの責任はその1社にしかありません。施主としては噛みつく相手がハッキリしているのでこれまた楽です。
監理者と施工者が別の会社だと、まず欠陥の責任を巡って施工と監理がバトルすることになります。そのため解決に時間がかかったり交渉が面倒くさかったりします。
ただ、この「責任取りたくない!」って感情が良い方向に働いて良い工事につながるのが本来の図式なので、「施工と監理一緒だしグループでフォローすればいいんだろ」的な感覚で工事されるのはやっぱり施主に損なことだと思います。
監理者が味方になってくれない以上、そもそも欠陥に気付けない可能性もありますしね。その場合は施主の1人損です。

 

というわけで、ハウスメーカーの施工監理一括受注が安くて楽なのは間違いないです。

特に家づくりにあまり労力割きたくないねんって人には向いています。

ていうか、そういう人に迎合する形でハウスメーカーはのし上がったのです。

勉強したくない・楽をしたいって施主が多いから施工監理一括受注が歓迎されたわけです。

まあその分のツケが「欠陥施工×甘い監理」として降りかかってくる場合があって、
そのとき施主は地獄を見るって話なんですけどね。高くつくし全然楽じゃない。

ただ、そんなヒドいことになる確率はそんなに高くないので、
監理と施工が多少癒着していてもいいじゃないって風潮が今の日本にあるわけです。

なんかフォローになってない気がしてきた。まあいいです。

建売住宅は監理の点からすると論外

ちなみに、建売住宅なんかはもう当たり前のように施工会社≒監理会社です。

建売住宅ってのはもう出来上がったソレを買うか買わないかの世界なので、

監理者の第三者性をどうこう言うような次元じゃないワケです。

牛丼屋でうな丼を食べるときに産地を気にしないのと同じです。

品質管理のプロセスが気になるような人は建売住宅を買うのには向きません。

第三者監理はどうやって確保するのか

ここまでの議論で「やっぱり監理者は第三者がいいなあ」と思った方はいるでしょうか。
筆者はどちらかというとそういう考えなので、同じ考えが浸透してくれると結構うれしいです。

ではでは、第三者監理ってのは具体的にどうやって頼むのでしょうか。その話をして記事を閉じたいと思います。

第三者監理は設計事務所に頼むべし

第三者監理は一般的に設計事務所に頼むのが正道だとされます。

施工会社や工務店と利害関係にない建築士が沢山いるからです。

実際、設計事務所の多くが工事監理も業務として請け負っています。

看板には設計のことばかり書いてありますけど、工事監理をお願いすれば「ああいいですよ」と相談に乗ってくれるでしょう。

ホームインスペクションという手段もある

第三者による住宅検査(ホームインスペクション)というサービスもあります。

これは、監理者として工事に携わりはしないけど技術的なチェックはしますよというサービスです。

監理者を自前で持ち込むことを嫌う建設会社が結構多いので、監理者でもないただの第三者として技術的な味方になってくれるわけです。

大体は建築士がやっていますので、技術的には監理と同じぐらいのレベルを期待することができます。施工会社へのプレッシャーとしても悪い選択肢ではないでしょう。

ただし、ホームインスペクション自体が法的に明記された役職でないため、責任が明確にならないという欠点があります。
怪しい業者を雇わないように注意しましょう。

ハウスメーカーでの第三者監理は難しい

先ほどの議論の蒸し返しになりますけど、ハウスメーカーは監理会社とガッチリ癒着しています。

なので、第三者の工事監理者を持ち込むのは基本的に嫌がられると思ってください。

ハウスメーカーの利益構造には第三者監理が入っていませんから、監理者を持ち込もうとすると「前例がない」とか「うちでは取り扱えない」とか言って断られると思います。それが大勢だと思います。
ただまあ、監理者を決めるのは施主の権利なので、やや強気に交渉してもいいと思います。

実際、大手のハウスメーカーで施工に自信があるようなところは「いいですよ」と言ってくれたりもしました
それだけでもその会社は信頼できると思うので、相手を試す意味で第三者監理を提案してみるのは結構オススメです。

逆に「監理者をこちらで決められないなら契約しない」とまで言っても断られたらそのハウスメーカーは無理です。監理者にこだわりたければ他を当たりましょう。ホームインスペクションでよければそれで進めましょう。

工務店への第三者監理は実現しにくいがベストマッチ

工務店での家づくりに工事監理者を持ち込むのもハードルが高いです。

小さい工務店なんかは付き合いで飯を食っているような場合も多いので、馴染みじゃない監理会社を使うのはやっぱり嫌がります。

ただ、自分の仕事をすればいいだけと開き直ってくれる親方も多くて、すんなりと監理者を受け入れてくれた、なんていうパターンもあります。これは工務店による部分が大きいです。交渉次第です。

ちなみに、小さい工務店だと手抜き云々の前に施工のレベルそのものがハウスメーカーより低い場合があります。

レベルというか”常識”とでもいうのでしょうか。新しい建材や設備の施工方法を知らないような工務店ってのは結構多いです。

そうした技術レベルの低さを補う意味で第三者監理はガッチリハマります。

普段付き合いのない監理者に見てもらうことで工務店自身が知識不足に気付くなんて場面もあります。

監理者「親方!ここの施工間違ってますよ!技術基準に合っていません!直してください!」

親方「んぇー!そんな決まりあんの!?

従って、工務店への第三者監理は(実現しにくいけど)非常に相性の良い組み合わせだと言えます。

ケンカタくん
ケンカタくん
ていうかそれが施工&監理の本来の姿なんだよ!!

建築家に家づくりを頼めば自動的に第三者監理になる

建築家に家づくりを頼めば第三者監理の状況になります。

建築家は自分で施工する術を持たないので、馴染みの工務店などに施工を外注するケースが多いです。

このとき、建築家は自分で監理者のポジションに収まります。
建築家は設計もやりますから、つまり設計&監理のポジションで工事に携わり、外注した工務店を積極的に監視してくれるのです。第三者監理の完成です。

この設計&監理っていう兼務はとても強力です。
設計者は自分の設計を100%分かっていますから、設計意図に100%沿った工事監理が可能なわけです。
設計者自身があなたの味方になって施工者と交渉してくれると考えてみましょう。それこそ最強の監理者ではないでしょうか。

ただし、設計と監理を兼務すると自分の設計の欠点に気付けないという弱点が出てきます。
監理者が設計者と別人なら、第三者的な目で設計不良に気付いてくれる場合があるんですけど、その機会が失われるわけです。

とはいえ、設計者=監理者という体制が強力なのには変わりないので、建築家に頼むメリットはここにもあると言えます。
建築家に頼むメリットは他にも沢山あるので、筆者としてはこの方法がイチオシです。まあデメリットもありますけど。

建築家に頼むメリットは建築家に頼むということ~メリットとデメリット~に書いてあります。合わせてご覧ください。

なお、建築家と工務店も”馴染み”という意味で利害関係がありそうですが、
この場合の力関係は監理者(建築家)>施工者(工務店)になるので、あまり問題にはなりません。
監理者が施工者に強くモノを言える立場であることには変わりないからです。