こんにちは。筆者です。
建築学超入門の第1回です。
今回は建物の基礎の話をします。
第1回で基礎の話をして、第2回で土台の話をします。
先に言っておきますけど、基礎と土台というのは別物です。これを区別できないと教授の言うことが分かりませんし、教科書も読めません。筆者は大学3年生まで知りませんでした。自分でも信じられませんけど、本当です。
まあとりあえず始めましょう。
建築学超入門では、建築界で「常識」とされている当たり前の知識をご紹介します。
筆者はここでいう「常識」を全く知らなかったために学習のモチベーションが下がり、大学で多留してしまいました。
「常識」すぎる知識は学ぶ機会が少ないですから、つまずくと逆に厄介だったりします。
皆さんには、まずこういう常識を十分にカバーしていただき、そのうえで勉学なり家づくりなりに励んでいただきたいと、そう思うのです。
基礎ってなんだ
基礎というのは、建物を建てるときに地面に打つコンクリートのことです。
別の言い方をすると、建物のうち地面に直接触れる部分のことを、基礎といいます。
“建物”という用語は建築基準法には出てこないので、この説明は厳密にいえば不正確ですけど、気にしないでください。
あと、地下階を作るときに地下部分の外壁が地面に触れますけど、それを基礎と呼ぶことは普通しません。こういう例外については、皆さんの読む気が失せない程度に注釈していこうと思いますし、読む気がなければ気にしなくてもいいです。超入門ですので。
基礎は鉄筋コンクリートで作ります。
昔の木造家屋なんかだとコンクリートの代わりに大きな石を使ったりしているのもありますけど、コンクリートの方が全面的に優れているので、今はコンクリートを使うことになっています。

基礎を作ることを「基礎を打つ」と言うことがあります。
コンクリートを型枠に流し込むことをコンクリを打つと言うので、「基礎のコンクリートを型枠に打つ」を略して「基礎を打つ」とするのです。
なお、この記事では単に「コンクリート」と省略しつつありますけど、正確には「鉄筋コンクリート」ですから、勘違いしないでください。建築で使う「コンクリート」というのは、ほとんどが「鉄筋コンクリート」のことを指します。
コンクリートはただの材料です。鉄筋の周りにコンクリートを流し込むと、鉄筋コンクリートになります。
基礎の存在意義
なんで基礎を打つ必要があるのかというと、建物は固いものの上じゃないと安定しないからです。
地面というのは、一見して固そうても実際はやわらかかったりします。特に表面はやわらかい傾向があって、人が歩けるぐらいの固さはあっても、重い建物を乗せるとグニャンと沈んでしまうかもしれません。
それは困るので、ある程度地面を掘って、固い部分(地盤)を見つけて、そのうえにコンクリートで基礎を作るのです。
実感を得たい人は布団の上でジェンガでもやってみてください。
で、そのあと布団の上にまな板でも置いて、今度はその上でジェンガをやってください。
柔らかい基盤の上だと建物が成り立たないのが感覚で分かると思います。基礎の重要性も分かると思います。
あと、木や鉄を地面に直接触れさせると腐朽してしまいます。
だから、木造でも鉄骨造でも、基礎だけはコンクリートにするのが当たり前です。地面に直接触れる部分だけはコンクリートにしたいのです。
基礎の種類
基礎にも種類があります。これは教科書に載ってるし、学校でもちゃんと教えてくれますから、超入門で教える必要性は薄いですけど、ついでに説明します。
直接基礎 | ベタ基礎 |
布基礎 | |
独立基礎 | |
杭基礎 | 杭基礎 |
ベタ基礎
ベタ基礎というのは、建物の下に全面的にコンクリートを敷き詰める基礎です。
建物の下にコンクリートで床を造るイメージです。
建物の1階の床をぶち抜いたらコンクリートが見える形になります。
一番多くコンクリートを使いますけど、そのぶん一番耐久力があって、今の新築住宅では(建売も含め)ほとんどスタンダードになっています。

ちなみに、コンクリートで作る床みたいな部分を「耐圧版」と読んだりしますけど、そのへんは超入門から遠ざかるのでこれ以上触れません。
布基礎
布基礎というのは、建物の土台の下にだけコンクリートを打っておく基礎です。
別の言い方をすると、建物の壁の下にだけ基礎を作るということです。要所だけ押さえる考え方です。
ベタ基礎に比べてコンクリートが少なくて済むのと、施工手間も少なくて楽なんですけど、壁以外の下にはコンクリートが無い(床の下が地面)なので、湿気やシロアリのリスクが気になります.
また、ベタ基礎と比べると基礎自体も弱い形になるので、基礎そのものの劣化や不同沈下(斜めに沈下すること)も気になります。古い木造住宅はほとんどこれです。

ちなみに、布基礎を作ったうえで、地面が見えている部分にコンクリートを適当に打つことがあります。(捨てコンといいます。鉄筋も入れません)
これは地面が全て隠れるので、一見してベタ基礎との区別がつきづらいのですが、構造的には明確に違うので、専門家を志す方は注意が必要です。
中古住宅を見るときとか、床の下を見てコンクリートがあれば「ベタ基礎ですね」とか言いたくなりますけど、「布基礎+捨てコン」の場合もあるから、難しいということです。
独立基礎
独立基礎というのは、柱(束)の下にだけコンクリートを打っておく基礎です。独立フーチング基礎といいます。
住宅で使われることはほとんどなくて、もっともっと大きな建物を建てるときに検討されます。基本的には鉄骨造や鉄筋コンクリート造の用語だと思ってください。
木造建築物の場合は、布基礎かベタ基礎がふつうは採用されます。
ここまでで説明した3つを直接基礎といいます。基礎そのものが直接地盤に支持するからそういいます。「地盤に支持」というのは難しい言い方ですけど、要するにコンクリートが固い地盤に直接届いているということです。
別の言い方をすると、固い地盤が浅いところにあるなら、コンクリートを簡単に届かせられるので、直接基礎が採用できます。
杭基礎
で、直接基礎でないものを杭基礎といいます。固い地盤が深いところにあって、直接基礎では届かない(支持できない)ときに杭を打ってなんとかする考え方です。
これにはまた色々と種類があるのですが、そろそろ「超入門」から遠ざかってくるので、今回はここまでにしておきます。絵だけ見てなんとなく分かればいいです。

木造住宅を新築するならベタ基礎が無難(余談です)
ちなみに、今は木造住宅にベタ基礎を採用するのが一般的です。ベタ基礎はコストがやや高いですけど、布基礎はそれ以上にデメリットが多いからです。
なので、これから新築を考えている人の場合、「うちは布基礎を採用します」とかいう業者に当たったら要注意です。まずは布基礎にした理由を聞くようにしましょう。
特別な理由があればいいですけど、ただ単にコスト削減とかの理由で布基礎を作ろうとしているなら、その業者は不安なので見送った方がいいと思います。
もちろん、布基礎には布基礎の良さが多少あって、場合によっては布基礎を採用した方が有利なこともありますから、布基礎だから即アウトというわけではありません。むやみな布基礎はアウトくさいということです。
例えばですけど、「なんでベタ基礎ではなく布基礎にしているんですか」という質問に対して「うちはずっと布基礎でやってんだよ」「布基礎はどこでも使ってるよ。大丈夫だよ」とかいって押し切ってくるような業者は避けた方がいいです。そもそも質問の答えになっていないので、その後のコミュニケーションにも不安があります。
「地盤が良く、布基礎で問題ないのでそうしています」とか「本当はベタ基礎の方がいいんだけどコスト削減のためです。勘弁してください」とかいう業者は、質問に答えているだけ見込みがあると思います。
さて、すこし話がそれましたが、このシリーズは柔らかい読み物を志しているので、ヨシとします。次回は土台の話をします。
