こんにちは。筆者です。
建築学超入門の第2回です。
今回は土台の話をします。
第1回でもお話ししましたけど、基礎と土台というのは別物です。
語感が似ているので混同しがちです。建築を学ぶ人は注意して覚えてください。
筆者は大学3年生のころまで両者の区別が曖昧だったので、教授の言っていることがよく分かりませんでした。
そんな奴がいま一級建築士としてブイブイ言わせているのです。信じられませんけど本当の話です。
では始めます。
建築学超入門では、建築界で「常識」とされている当たり前の知識をご紹介します。
筆者はここでいう「常識」を全く知らなかったために学習のモチベーションが下がり、大学で多留してしまいました。
「常識」すぎる知識は学ぶ機会が少ないですから、つまずくと逆に厄介だったりします。
皆さんには、まずこういう常識を十分にカバーしていただき、そのうえで勉学なり家づくりなりに励んでいただきたいと、そう思うのです。
基礎の話はこっち↓です。

土台ってなんだ
土台というのは基礎の上に敷く木材です。
別の言い方をすると、建物の一番下に来る木材です。(その下はもう基礎なのでコンクリートです)
もちろん、ただ敷くだけではなくて、基礎に対して固定しなければなりません。

土台の存在意義
土台の役目は柱と基礎の橋渡しです。
木造では、柱を基礎(コンクリート)に直接つなぐのが難しいので、
まず土台を基礎に緊結して、柱を土台に緊結するのが一般的です。
「柱→土台→基礎」という順に緊結されていると思ってください。下の図みたいな感じです。

逆に言えば、柱を直接基礎に緊結してしまえば、土台を省略することは可能です。
建築基準法施工令の第42条にも明記されています。その場合は下の図みたいになると思います。
ただ、実際に土台を省略している木造建築物は見たことがないです。
土台を省略するよりも土台を作った方が施工的に色々と便利(大工さんが楽)だからだと思います。
一方、鉄骨造や鉄筋コンクリート造には土台の概念がありません。
これらの構造では、柱をそのまま基礎に繋ぐのが普通ですから、土台など要らないのです。
なので、超入門的には、土台は木造建築の専門用語だと理解してください。
教科書には”土台は柱の応力を基礎に伝える”とか書いてあるかもしれません。
でも、この記事ではそういう難しい言い方はやめておきます。
あと、「柱を基礎に直接緊結すれば土台を省略できると建築基準法施工令に書いてある」みたいなことは常識でもありませんし、いま覚える必要も全然ありません。
ただ、この記事で教える「常識」には色々と抜け道なり例外なりがあって、ものによっては法令や共通仕様書に載っているということは、なんとなく知っておいてください。
土台は重要だが傷みやすい
土台は重要です。土台の上に建物が全部乗っかっているからです。
土台が傷むと建物全体のバランスが崩れるので住み心地への影響が大きいです。
耐震性低下・床鳴り・家が傾くなどが起き得ます。
それでいて、土台は傷みやすい部材です。
地面に一番近い木部なので、シロアリや湿気のリスクを一番受けることになるのです。
しかも、土台はメチャクチャ直しにくいです。
繰り返しですけど、土台の上に建物が全部乗っかっているからです。
基本的に更新できないものだと思った方がいいです。
というわけで、土台は「住み心地への影響が大きい・傷みやすい・直しにくい」と三拍子そろった超重要な部位なのです。木造住宅を新築するときは土台にお金をかけましょう。他を削ってでもです。
これは基礎にも同じことが言えます。基礎はコンクリートなので耐久性こそ高いですけど、テキトーな施工をしたら同じぐらいリスクがあると思ってください。
土台に向いている木材とは
少し脱線しますけど、以上の議論から、土台には「湿気にもシロアリにも強い」木材を使うべきだといえます。
具体的にはヒノキ・ヒバ・スギの赤身などが一般的な最適解です。湿気にも強いです。
逆に、ベイツガ・アカマツなどはシロアリの大好物なので、最悪といえます。
土台に適する … ヒノキ・ヒバ・スギの赤身
土台に最悪 … ベイツガ・アカマツ
※どちらも一例です。ここに書いていない木材については逐一調べてください。
建売を買うときはベイツガの土台に注意(余談)
しかし、しかし、しかしです。
実際は”防蟻処理したベイツガ”がよく土台に使われています。ただ単に安いからです。
特に安普請の建売住宅でよく見られます。
専門家として言わせてもらうと、防蟻処理したベイツガはとても怖いです。
防蟻剤が効いている部分はもちろんよいのですが、現場で木材をカットしたり削ったりすると、その部分は防蟻剤が落ちて剥き出し(ノーガード)になるわけです。
その場合、防蟻剤を再塗布するなどしてガードを補填する必要があるのですが、そういう丁寧な施工をする現場は稀です。そういうところに気を遣える現場なら、そもそもベイツガを採用しないからです。
特に建売などは施工が無遠慮になりがちですから、ベイツガを好きなだけ削り、防蟻剤の再塗布を端折ることが容易に想像できます。ノーガードになるリスクが極めて高いといえます。
ノーガード状態のベイツガはシロアリに対して最弱中の最弱です。建築の教科書にもはっきり書いてあります。それを土台に使うのは、はっきり言って愚かです。
さらに、建売住宅を購入する方は一般的に建物の構造やメンテナンスに無関心な場合が多いですから、「ベイツガ土台を使い、しかも長年メンテナンスしていない建売住宅」というのはかなり多く存在すると思います。この記事を読んで心当たりがある方は、なるべく早く手を打ちましょう。
ベイツガ土台が即アウトというわけではありませんけど、5年に1度のシロアリ防除は絶対に欠かさないようにしましょう。
すみません。完全に余談でした。
土台と基礎の違い:おさらい
大事なのでまとめます。
基礎というのは、鉄筋コンクリートで作る物です。地面に直接接します。
木造でも、鉄骨造でも、どんな建物であれ、基礎だけは鉄筋コンクリートで作ります。
土台というのは、基礎の上に敷く木材です。
木で造る物なので、木造建築でのみ出てくる用語です。
材料 | 配置 | 適用 | |
基礎 | 鉄筋コンクリート | 地面に直接触れる | どんな構造でも登場 |
土台 | 木材 | 基礎の上に敷く | 木造建築にのみ登場 |
どちらも替えが効かない重要な部分なので、材料と施工の品質を特に気をするべき部分だといえます。