一級建築士試験

建築士試験の建築史について~足切り回避の勉強方法~

建築士の試験の中に「建築史」という分野がありますね。

建築史は他の分野とはちょっと毛並みが違います。建築の歴史・実例・設計者、都市計画の実例・提唱者など、単純な知識量を問う問題が多いです。

どうやって勉強すればいいかお悩みの方も多いと思うので、筆者が独学でどう対応したかをお伝えしようと思います。

筆者は建築史がイヤでイヤで仕方ありませんでした。

筆者は根っからの理系人間で、日本史や世界史の年号とか人物を覚えるのも苦手です。

建築史も例に漏れず大嫌いで、勉強するのが非常に苦痛です。

この記事は、そんな人の参考になればいいなーと思って書いています。

 

建築史は最低限の勉強でよい

まず筆者なりの結論というか主張を言います。

建築史の勉強は最低限に抑えてよいです。

理由は以下の2点です。

  • 建築史を捨てても試験には受かる
  • 試験対策としてのコスパが悪い

 

ただし、建築史を完全に捨てるのは危険だとも思います。(そこは後で解説します)

順に説明してゆきます。

 

建築史の出題割合は低い

建築史を捨てても試験には受かります。これは事実です。

 

例を挙げます。

2018年の一級建築士試験では、建築史にかかる出題は全部で4問ありました。

全125問中のたった4問なので、捨てても大勢に影響ないのは明らかです。

ちなみに、この年は91問正解すれば合格する年でした。

2018年の出題 … /125

(建築計画 No.3 No.10 No.13 No.17)

 

建築史を捨てても試験には受かる

実際、筆者は二級でも一級でも全く勉強しませんでした

それでも受かったのですから、建築史は捨ててもいいのです。結果論だけどそれでいいのです。

 

ーでも、過去問ぐらいはやったんでしょ?

いえ、過去問でも全く手を付けませんでした。建築史の問題は「あーハイハイ建築史ね」って感じで完全にスルーしていました。

模試代わりに過去問を通すときも、建築史の問題は手を付けずに最初から「×」にしていました。テキトーにマークして運よく正答したとしても本番でそうなるか分からないからです。皆さんも模試や過去問でのラッキー正答は「×」にしておくといいですよ。

 

建築史は出題範囲が広い(コスパが悪い)

なんで筆者がこんなに建築史を避けるかというと、コスパの悪さがイヤだからです。

まず、建築史は出題範囲が広いです。いや、筆者は勉強したことがないので実際に広いのか正確には知りませんけど、とにかく超広いイメージがあります。

古代ローマの建築様式、江戸時代の日本の建築物、海外の建築家が提唱した都市計画の概念、果ては最近の実例建築物まで、まあとにかく色々な物事を暗記しなくてはいけません。うん、やっぱり広いですね。出題範囲。

特にこの「暗記」ってのが難点でして、建築史の単語ってのはそれぞれが独立しすぎてて、「理解」じゃなく「暗記」に寄った勉強を強いられるのです。

建築構造や建築施工なんかは各単語にストーリーがあるというか、ある程度まとまった概念があるから覚えやすいんですけどね。

例えば「ディープウェル工法」と「ウェルポイント工法」と「ボイリング」と「ヒービング」なんてのはある程度まとまった概念ですから、一連の知識として一気に覚えることができますよね。ところが「竜蛇平団地」と「世田谷区深沢環境共生住宅」と「茨城県営六番池アパート」なんてのはお互いに全然関係ない単語ですから、一つ一つ暗記していくしかないわけです。それが辛いのです。

で、興味が無いことを暗記するのって味気なさ過ぎてキツいんですよね。一級建築士の勉強方法でも述べましたけど、周辺知識の無い分野を暗記するのは苦行みたいな側面があるんです。

しかも出題範囲が広いですから、ちょっと勉強したぐらいでは点数にならないのです。筆者は二級の時に少しだけ勉強してみて、手応えが無かったので完全に捨てる決断をしました。正しい判断だったと思っています。

もちろん、建築史の知識は教養として押さえておくべきところです。建築士になってそういうのを知らないと結構恥ずかしいですから、いつかは勉強すべき内容だと思いますし、元から得意な人はそのまま勉強して得点源にすべきだと思います。ただ、私みたいな「興味薄い系」の人間にとって、試験勉強としてのコスパは悪いよなあ…って話です。

 

建築史を捨てるリスク:足切りの危険

建築史を捨てるときに注意すべきことが1点だけあります。

足切りです。

建築士試験は科目ごとに足切りのラインが設定されていて、1科目でもラインを割ってしまうとその瞬間に不合格です。

建築史の出題はそんなに多くないですけど、足切りとの関係は結構シビアです。

ちょっと説明します。

足切りラインと建築史の関係

建築史が出題範囲に含まれるのは建築計画という科目です。

この科目の問題数と基準点(これ未満だと足切り)は以下のとおりです。

建築計画の出題数 基準点
一級建築士 20 11
二級建築士 25 13

※基準点は試験の難易度で多少前後します。

見てのとおり、50%超の正答率で足切りは回避できるようになっています。

これは試験的にはまあまあ甘いラインです。満遍なく勉強すれば足切りが原因で落ちることは無い!って言えるぐらいの優しい設定だと筆者は思います。(足切りで落ちる人はそもそも総合点でも落ちます)

ただ、建築史を丸々捨てる場合は話が変わってきます。

先述のとおり、2018年の一級建築士試験では建築史の出題が4問ありました。

これを丸々捨てるということは、残り16問の中から11問の正解をもぎ取る必要があるということです。

建築計画の出題数 建築史以外の出題数 基準点
一級建築士 20 16 11

 

つまり、建築史を捨てる場合は建築史以外の問題で68%以上の正答を出せないと足切りに引っかかるのです。

これは試験的には割とシビアなラインです。ちゃんと対策して勉強しないと68%の正答は得られません。対策していても事故ったら危ないラインです。

結局、建築史を捨てるかどうかは、建築計画の他の分野にどれだけ自信があるかで判断するべきだと言えるでしょう。

実際の試験では、建築史の問題もマグレ当たりする場合がありますから、事情は少しマシになります。一級建築士は4択問題だから4問捨てても1問はマグレ当たりする期待値になります。とはいえ、そういうマグレを期待して試験勉強すると、本番まで不安が拭えないですね。

二級建築士の場合は元の問題数が多いですから、建築史を捨てても結構余裕があります。

 

2017年は建築史が7問も出題された

ちょっと厳しい事実を紹介します。

実は建築史の問題が5問以上出題されている年もあるのです。

直近7年間の出題状況を整理してみましょう。(一級建築士試験のデータです)

 

建築史の出題数 建築史以外の出題数 基準点
2019 6 14 11
2018 4 16 11
2017 7 13 11
2016 5 15 11
2015 5 15 11
2014 3 17 11
2013 5 15 11

 

ご覧のとおり、ほとんどの年で「建築史の出題が5題以上」となっていることが分かります。

特に2017年の試験は酷いです。建築史が7問も出ています。

ここで建築史を丸々捨てた場合、残り13問の中で11問正解しないと足切りされます。正答率で言うと84%が求められます。

こういう年があることを考えると、建築史を丸々捨てるのはリスキーだと評価せざるを得ません。

ちなみに、筆者が学科合格したのは2016年です。建築計画は13点でした。建築史も1問だけマグレ当たりしました。

 

目指すレベルは”2問確答”

というわけで、建築史を丸々捨てるのは結構なリスクを含むことが分かりました。

それでも、建築史で満点を目指すのは厳しい(コスパが悪い)話だと思うので、皆さんが目指すべきは「足切りされない程度に建築史を誤魔化す」というレベルだと思います。

具体的には、建築史が5問きたら2問は確答できるぐらいのレベルになれば、少なくとも足切りに怯えることはないと思います。

1問確答できるだけでもかなりマシな状況になるので、どうしても苦手な人はそのレベルを目指しましょう。

 

建築史の勉強は過去問で

で、その勉強方法なんですけど、過去問に出た事例だけを徹底的に覚えましょう。

筆者は建築史を勉強していないので実感が無いんですけど、どうも最近の建築史の問題は「過去問の事例を理解していれば消去法で解ける」とかそういうものが多いみたいです。

建築史が5問出たとして、そのうち少なくとも2問ぐらいはそういう問題になっているらしいです。2019年の試験なんかは、「建築史は過去問ばかりだった」みたいなレビューが結構見られました。

というわけで、足切り回避のための最低限の勉強という意味では、過去問に出た事例だけをガッツリ暗記すればなんとかなるようです。

出題範囲が広すぎてやる気が起きない建築史ですけど、過去問だけに範囲を絞れば多少はやる気が出るかもしれませんね。

筆者も「過去問だけでいいよ!」って言われたら勉強していたかもしれません。

ちなみに、建築史の勉強方法を調べてみると「予備校のテキストが使いやすいよ~」って意見が多いですけど、筆者のような独学組はそんなもん手に入りませんので、やはり過去問に出た内容をリスト化して覚えることになったと思います。