建築士試験の勉強をしているとこんな記述を目にすることがあります。
レストランの厨房の面積 | 全体の25~45% |
---|---|
喫茶店の厨房の面積 | 全体の10~20% |
これは喫茶店の厨房はレストランの厨房より小さくていいですよ~って意味です。
理解しやすい内容なのでサッと読み流してしまいがちですけど、
んーよく考えたら分からないことが。
レストランと喫茶店って何が違うんでしょう。
別にこれを知らなくても建築士試験には受かるんですけど、
全く意味を知らないってのも気色悪いので調べてみました。
するとまあ明確な定義がありました。ご紹介します。
Contents
法律でハッキリ定義されていた!
もういきなり答えから入りましょう。
レストランと喫茶店の違いは食品衛生法施行令でハッキリと示されています。
第三十五条第一項
飲食店営業
(一般食堂、料理店、すし屋、そば屋、旅館、仕出し屋、弁当屋、レストラン、カフエー、バー、キヤバレーその他食品を調理し、又は設備を設けて客に飲食させる営業をいい、次号に該当する営業を除く。)
第三十五条第二項
喫茶店営業
(喫茶店、サロンその他設備を設けて酒類以外の飲物又は茶菓を客に飲食させる営業をいう。)
食品衛生法施行令(厚生労働省HPより)
つまり、客に飲食させる店は基本的に全部レストラン(飲食店)であって、その中でノンアルコールと茶菓だけ提供する店を特別に喫茶店に呼ぶということです。
レストラン(飲食店) | 飲食させる店・全般! |
---|---|
喫茶店 | ノンアルコールと茶菓だけ |
超ざっくり言えば「茶と菓子だけ」の店は喫茶店になるんですね。
なんだかイメージ通りの定義です。
店の名前は何でもいい
1つ補足します。
上で説明した定義は法律上の業種のことであって、店の名前は自由です。
営業許可が「飲食店」でも店名を「喫茶店」にすることは余裕でOKです。
「○○喫茶店」という名の「レストラン(飲食店)」
「飯屋○○」という名の「喫茶店」
どちらもOKです。まあ後者は客来ないでしょうけど。
茶菓ってなんや:茶菓の定義とは
上の定義でまあ大体分かりましたけど、筆者は1つだけモヤモヤしました。
茶菓って何でしょう?
いや、茶と菓子なのは分かりますけど、どこまでが茶と菓子なんでしょうか。
ニンニクたっぷりの背脂ラーメンを茶菓です。とか言ってゴリ押しても許されるのでしょうか。
そんなワケねえのも分かるんですけど、明確な線引きが知りたいじゃないですか。せっかくだから調べてみました。
ちなみに、茶菓の読み方は「さか」です。「チャカ」じゃありません。それは拳銃です。「ちゃか」でもOKでした。すみませんでした。
茶菓≒トースト・かき氷・ソフトクリームまで
先に言っておくと、茶菓に関する完璧な線引きは見つけられませんでした。
判例とかも調べてみましたけどハッキリしません。
先述したように店名は自由なので、喫茶店をやりたい人でも普通に飲食店の許可を取っちゃうのでしょう。
茶菓の線引きが問題になったことは少ない印象を受けました。
ただ、島根県の保健所が以下のような定義を示していました。
表にまとめてご紹介します。
喫茶店の許可で“できる” | 喫茶店の許可では“できない” |
トーストまでの食べ物の提供 | サンドイッチ等の調理&提供 |
ソフトクリームの分注販売 | |
アイスクリームの小分け販売 | |
かき氷の提供 | |
水の量り売り | |
コップ式自動販売機でのジュース類販売 |
島根県の保健所のページ【定義及び施設基準】より
これを見る限りだと調理を伴うかどうかが大きな線引きとなりそうです。あと一般的に言って簡素なお菓子かどうか大事でしょうか。
ただ、「袋菓子ならOK」とか「菓子を提供するのも小分けしちゃダメ」とかそういうザックリした意見もネット上に散見されました。
そもそも茶菓に関しては法律上に明確な定義が無く、法律の細かい運用も各都道府県の条例に任されています。
島根県の保健所が独自に判断基準を示していることから考えても、茶菓の範囲は行政の判断次第だと言えそうです。喫茶店で営業許可を取りたい方は保健所に聞くのが一番ですね。
トーストまではOKっていうのは統一見解でしたけど、トーストまでってのも曖昧でスッキリしませんね。自家製の酢昆布なんかはダメなんでしょうか。分かりません。
レストランと喫茶店では許可の難易度も違う
レストランと喫茶店の違いは分かりましたけど、両者を区別する実益はどこにあるのでしょうか。
実は、喫茶店は設備が少なくても営業許可が下りるのです。
茶菓しか提供しねえんだから立派なシンクとか要らねえだろうよの精神です。
レストランと比べて、設備投資の費用を抑えて開業できるのが喫茶店の強みであって、両者を区別する実益はここにあります。喫茶店の方が始めやすいのです。
具体的な差を見てみましょう。
東京都の保健局が施設基準を示しています。編集して紹介します。
飲食店営業 | 喫茶店営業 | |
冷蔵設備 | 食品を保存するために、十分な大きさを有する冷蔵設備を設けること。 | 飲食店と同じ |
客席 | 客室及び客席には、換気設備を設けること。(以下略) | 飲食店と同じ |
客用便所 | 客の使用する便所があること。(以下略) | 飲食店と同じ |
洗浄設備 | 洗浄槽は、2槽以上とすること。ただし、自動洗浄設備のある場合又は食品の販売に付随するものであって、当該食品の販売に係る販売所の施設内の一画に調理場の区画を設け、簡易な調理を行う場合で衛生上支障ないと認められるときは、この限りでない。 | 規定なし |
給湯設備 | 洗浄及び消毒のための給湯設備を設けること。 | 規定なし |
東京都福祉保健局のページ【施設基準(一般営業)】より
まあ長々と書いてありますけど、要するに喫茶店では洗浄設備(シンク)と給湯設備が不要なのです。(東京都の基準なので注意してください。)
シンクと給湯設備の有無は設備的にデカい
建築設備的な面から言うと、シンクと給湯設備を設ける場合、
設置場所の確保・配管ルートの確保が絶対に必要です。
さらには給水ポンプの圧力・水槽の容量・既存配管の管径・厨房油脂除害設備の設置とか、そういう施設レベルにまで話が及び得ます。
よって、シンクと給湯設備の有無は開業の難易度に思い切り関わると思います。
飲食店用のビルだから配管が手元まで来てるとか、居抜き店舗で既にシンクがあるだとか、そういう楽なパターンもあるにはあるでしょうけどね。
何も準備がないところにシンクと給湯設備を作るのは多分メチャクチャしんどいです。
ていうか喫茶店は冷蔵庫と客席とトイレだけあればOKなんですね。コンセントがあれば営業できそうです。そんなに簡単なのか!喫茶店!
(上の表に無いだけで床材とか更衣室とかの要件はあります。詳しくは東京都福祉保健局のページとか地元の保健所のページをご覧ください。)
まとめ
なんとなく始めた議論でしたけど色々分かりました。
レストランと喫茶店の違いは茶菓までかどうかですけど、その基準は明確でなくて行政の判断なのかなーってところでした。
また、レストランと喫茶店では許可までに必要な設備投資が全然違くて、喫茶店の方が圧倒的に開業しやすい様子でした。
ただ、世の中にある喫茶店のほとんどは茶菓以上のものを出しているので、そういうお店はたぶん飲食店の許可を取ったうえで喫茶店を名乗っているのだろうなーと分かりました。
たぶん純粋な喫茶店って想像以上に少ないのでは。こんど店に入ったら営業許可の種類を調べるのも面白そうですねー。