これは筆者の個人的な勘違いを正す記事です。
理学の素養がある方からは「なんだイマサラ」「そんなの知ってるよ」と言われてしまいそうなことしか説明しません。
特に生物学を学んだ方にとっては常識レベルの話しかしませんので、ツマラナかったらごめんなさい。
進化論ってご存知ですか。
生物の進化に関する一連の理論で、主にチャールズ・ダーウィンによって提唱されました。
特に有名なのは彼が1859年に発表した『種の起源』という一作で、
これは今なお日本語訳が発売されているほどの大著です。
ダーウィン=種の起源っていうのは中学の理科のテストに出るぐらい有名です。
それ知ってる!って方も多いでしょう。
ただなんていうか、進化論って名前ばかりが有名でして、その内容って実はあまり知られていないと思うんですよね。間違った概要ばかりが伝わっています。
実は筆者もその口でして、生まれてから30年ぐらいは進化論を間違って理解していました。
筆者がこの記事を書くのは、『種の起源』を読んで自分の誤解に気付いたことがあるからです。
そして、たぶん同じ勘違いしている方が多いと思うからです。
この記事では、筆者がどんな勘違いをしていたかを説明し、正しい理解とはどういうものかを説明します。
進化論ってアレでしょ?人間はサルから進化したとかいうやつでしょ??程度の理解の方には新鮮な記事になるかもしれません。ぜひ読み進めてください。
Contents
誤解された進化論
子どもに進化論を説明するとしたらどう説明するでしょう。
大体こんな説明↓をするんじゃないでしょうか。
動物や植物ってのは時間が経つと進化するんだ。
キリンさんの首はすごく長いよね。
でも昔はね、キリンさんの首は短かったんだよ。
キリンさんがね、高いところにある木の実を食べたい食べたいって思ったから、だんだん首が長くなったんだ。進化ってすごいね。
幼少期の筆者が受けた説明はまさにこれでした。
ところがどっこい、この説明には致命的な間違いがあります。
この説明を違和感なく読み流したアナタに言いたい。
アナタ、間違っています。
子供向け説明の致命的な間違い
上の説明のどこがどう間違っているかを指摘します。
動物や植物ってのは時間が経つと進化するんだ。
これは合っています。動植物は時間が経つと進化します。
キリンさんの首はすごく長いよね。
でも昔はね、キリンさんの首は短かったんだよ。
これも合っています。キリンさんの首は昔は短かったんです。
昔 | ![]() |
---|---|
今 | ![]() |
キリンさんがね、高いところにある木の実を食べたい食べたいって思ったから、だんだん首が長くなったんだ。進化ってすごいね。
これが間違いです。
キリンは何も考えちゃいない
進化にキリンの考えは関係ありません。
キリンは首を長くしようなんて思っていません。
ていうかそもそもキリンさんにそんな脳みそありません。
「ああ、俺の首が長ければ木の実に届くのになあ…」なんて思いませんし、
思ったところで首が長くなるわけありません。
キリンの首は本人の希望などに関係なく、勝手に長くなっていったのです。
キリン自身は特別なことなど何もしていません。
進化は勝手に進むのです。
進化論の本当の意味
進化論が本当に主張するのはコレ↓です。
首が短いキリンは死んだ。
首が長いキリンは生き残った。
だからいま生き残っているキリンの首は長い。
いいですか。↑ここ大事です。
キリンさんの意思や望みなんてものは関係なくて、
首が短いキリンはただひたすらに死んじゃったのです。
その結果、首が長いキリンだけが生き残って今に至るのです。
進化ってのは結果論なのです。
首が長いキリンは自然に生まれる
昔のキリンは首が短かったと言いました。
では、首が長いキリンはどうやって生まれたのでしょうか。
突然変異でしょうか。いや、違います。
世代交代の度に少しずつ首が長くなったのです。
首が短いキリンから、首がちょっと長いキリンが生まれる。
首がちょっと長いキリンから、首が少し長いキリンが生まれる。
首が少し長いキリンから、首がやや長いキリンが生まれる。
つづく
↑こういうことです。
人間に例えてみると分かりやすいかもしれません。↓
身長170㎝の男性がいます。日本人の平均身長に近い男性です。
この人から175㎝の息子が生まれることはよくあります。
父親より背が高いですけど、5㎝ぐらいならよくあることですよね。
これを突然変異とは言いませんよね。
さらに、その孫が180㎝を超える可能性は十分あります。
175㎝の息子から180㎝の孫が生まれても全然おかしくありません。
なので、170㎝の男性に180㎝の孫がいるのはよくあることです。
※母親の身長を全く無視していますけど、まあ全体としての意味は伝わると思います。
【これ大事】首が短いキリンも同じくらい自然に生まれる
上の説明とは全く逆のこともあり得ます。
↓こんな感じで、世代交代の度に少しずつ首が短くなることもありえます。
首が短いキリンから、首がさらに短いキリンが生まれる。
首がさらに短いキリンから、首がさらにさらに短いキリンが生まれる。
キリンは何も考えてなくて、ただ生きて子どもを産んだだけなんですから、首が短い子が生まれる可能性もあったのです。首がもっと短いキリンも生まれるのです。
でも今いるキリンの首はみんな長いです。
じゃあ、確実に生まれたであろう首の短い子はどこに行っちゃったのでしょうか。
首が短いキリンは死んだ
大変残酷な答えですけど、首が短いキリンは死んだのです。子孫を残せなかったのです。
正確に言うと、死ぬ確率が高かったのです。子孫を残せる確率が低かったのです。
ここでよく見る図を出します。
キリンがいて、背の高いリンゴの木があります。
キリンが何を食べるか知らないのでリンゴにします。
首が長いキリンはリンゴを食べることができます。

首が短いキリンはリンゴを食べることができません。

だから、首が短いキリンは死ぬ確率が高いんです。
リンゴ1個の差が生存率の僅かな差になった
一応言っておくと、リンゴ1個食べられなかったぐらいじゃ普通のキリンは死にません。
そもそも、首が短いキリンでも届くような木はたくさんあったハズです。

リンゴ1個を食べられなかったからといってすぐに餓死するわけじゃありませんから、
リンゴ1個の差が2頭の命運を分けるなんてことは滅多になかったハズです。
ただ、それでも首が長いキリンはリンゴ1個分だけ有利だったのです。
これはものすごく小さなアドバンテージですが、たしかにアドバンテージなのです。
首がちょっと長いキリンが0.1%だけ生存率が高いみたいな、そういう超僅差だったハズです。
ただ、それは確かに差なのです。

生存率の僅かな差が子孫の特徴としてあらわれた
首が長いキリンさんは0.1%だけ多く生き残ることができました。
だから、0.1%だけ多くの子どもを作ることができました。
そうなると、子どもの代には首が長いキリンが少しだけ多く生まれます。
なぜかというと、親が首が長い確率が高いからです。
首が長い親からは首が長い子が生まれやすいからです。
ただし、首が短い子だって生まれるかもしれません。親の首が長くても、そういう子が生まれることは有り得ます。これは確率論です。
ただ、子の代においても、首が長い子はやはり生き残りやすいです。
0.1%だか0.2%だか知りませんけど、やっぱり首が長い子が少しだけ多く生き残り、子どもを作れるのです。
そうなると、孫の代には首が長いキリンがもう少し多く生まれます。
これを繰り返せば繰り返すほど、子孫のキリンの首は長くなります。
首が長い確率が高くなります。
たった0.1%の差が長い年月で積み重なった結果、首が短いキリンは徐々に減り、首が長いキリンだけが残ったのです。
進化論が言いたいこと
進化論が言いたいのはこういうことです。
首の長さの僅かな差によって、
生存率に僅かな差が生まれる。
その差は本当に微々たるもので、短い時間においては殆ど意味をなさない。
ただ、それが長い年月によって積み重なると、徐々に大きな差となって子孫に表れる。
その大きな差が無視できないほど明らかな形質となったとき、それは種となる。
そこに進化が完成するのである。
キリンの首の長さをキリン自身が選ぶことはできません。
ただ、自然界は首が短いキリンに厳しかったのです。
たまたま生まれた短い首のキリンは子孫を残しにくくて、
たまたま生まれた長い首のキリンは子孫を残しやすかったのです。
その差は本当に僅かなんですけど、長い時間を経た結果、首が長いキリンが圧倒的に多く残りました。つまり、首が短いキリンは自然に淘汰されたのです。
まとめ:進化は強要されるもの
いかがだったでしょうか。
進化ってのは周りの環境によって生み出される現象であって、生物はただ受け身なだけなのでした。
筆者が子どもの頃に理解した進化論は「進化したい!→進化した!」という前向きなものでしたけど、
本当の進化論は「不利な者は死ぬだけ→有利な者が生き残った」という後向きなものでした。
キリンさんは進化を祈ったわけではなく、自然環境によって強引に進化させられたのです。
筆者はこの理解に至ったとき大変衝撃でした。
今まで信じていた進化の原理が180°真逆だったことを感じました。
どうでしたかね。