本記事ではアース線の意味と意義を徹底的に解説します。
- アース線の意味が分からない方
- アース線の必要性が分からない方
- これから電気屋にエアコン工事を頼む方
まず先に言っておきます。
アース線を付けていない状態はかなり危険です。ある日突然感電する可能性があります。
少しでも心当たりがある方、是非最後までお読みください。
記事の終盤では「アースが取り付けられない場合の代替手段」も紹介しています。
なお、この記事には「漏電」という単語が頻出します。記事を読み進める中で「漏電って何だっけ?」と思ったらコチラ↓の記事をご覧ください。

Contents
アース線を付けていないケース
皆さん、アース線はちゃんと付けていますか?
皆さんのお宅を拝見すると、アース線をちゃんと付けていないケースが結構あります。
特に代表的なケースを紹介しますので、あなたのお家に心当たりがないかを確認してみてください。
古い住宅の2階のエアコン
1番多いのが古い住宅の2階のエアコン。アース線だけが未施工のパターンが大変多いです。

古い住宅なんかだと、そもそもエアコンの設置付近にアース端子が無いことがあります。そういうときは本当は電気工事(アース新設)が必要なんですけど、テキトーな電気屋だと「まあいいや」っつってアースを省略しちゃうのです。
昔は本当に手抜き工事が多かったので、昔に付けたエアコンほど注意が必要です。
今はまともな電気屋が増えましたけど、それでも手抜きがゼロになったわけではありません。自宅で工事してもらう場合は必ず自分でも確認してください。アース工事が必要なケースはこの記事の後半にまとめています。
自分で取り付けたウォシュレットや食器洗浄機
温水洗浄便座(ウォシュレット)や食器洗浄機を自力で取り付けたケースでも未施工がよくあります。

やはり古い住宅ですと、トイレや台所にアース端子が無い場合が多々あります。
そこに自力で機器を取り付けて、アース線だけ未接続になっているようなケースが大変多いです。
自分で買ってきた機器を頑張って取り付けて、さあ終わったと思ったらアース線を接続する場所が無かった。そんなときに「面倒くさいから無視しよう」と思う気持ちは非常によく分かるんですけど、とにかくそれは危険なのです。どうしても面倒だって人のためにアース無しで代替する方法も最後に紹介しています。そこだけでも読んでください。
アース線の意義
ここからはアース線がなぜ必要なのかを説明します。
先に結論を言ってしまうと、アース線が必要な理由は「漏電時の被害を最小限にするため」という一言に集約されます。
アース線が無いと感電事故が起きる理由
この記事の冒頭で、アース線が無いとある日突然感電する可能性があると述べました。
その理由を細かく説明します。図も説明も多いですけど付いてきてください。
①通常のとき
図のように室外機を設置した場合を考えてみます。アース線は設置されていないと考えてください。

このとき、室外機の電気回路はこんな風になっています。動力を必要とする換気扇部分まで電線が伸びています。

本当は室外機内部がもう少し複雑な配線になっていますし、電源は室内機から伸びて来るんですけど、そのへんは適当に省略しています。
このとき、室外機を起動させると図のような電流が発生します。
電線のルートが一本道なので、室外機に入る電流と室外機から出てくる電流は一緒です。

ここまでが正常な状態です。
②室外機の外側の電線が破損したとき
ここで、室外機の外側の電線が損傷して銅線が剥き出しになった場合を考えます。

上の図みたいに銅線が剥き出しになったとしても、銅線に触るものが何もなければ問題ないです。
ただ、銅線が何かに触れてしまった場合は下図のように電気が流れます。

一部の電流が地面に逃げてしまうわけです。
これを漏電と言いますが、このように電線が地面につくパターンの漏電はさらに地絡と呼びます。
で、このケースではアース線を付けていようが付けていまいが関係ありません。
電気は地面に向けて漏電し、すぐに漏電遮断ブレーカーが落ちて電気が止まることになります。
③室外機の内側の電線が破損したとき
アース線が効果を発揮するのはこのケースです。
室外機の内部配線が損傷し、室外機の外装に触れてしまった場合を考えてみましょう。下の図みたいな感じです。

このとき、室外機の土台(コンクリートブロック)が絶縁体なので、電気が地面まで流れる道がありません。室外機で行き止まりになっています。
ちょっと電気の立場になって考えてみましょう。
電線が損傷して銅線が剥き出しになっているなら、電気はそこから流れ出て地面に向かいたいです。地面に向けて脱走したいのです。
ところが、電線から出てみたらそこは室外機の外装でした。じゃあ室外機のもっと先まで流れてみようと思うんですけど、次にあるのは絶縁体の壁だけでした。せっかく電線の外に出られたんですけど、室外機から先が行きどまりになっているのです。電気はこれ以上先には進めないのでした。
そこで電気がどういう行動をとるかというと、とりあえず元の道に流れます。
だって室外機の方は道がありませんから。電気は道がある方に流れるのです。室外機には道がありませんから、流れることはできません。
なので、表面上は室外機が問題なく動きます。
電流はどこにも逃げられませんから、行きと帰りの電流量も変わりませんし、漏電遮断ブレーカーも反応しません。

ただし、室外機の外装までは道が通じてしまっていますので、室外機の外装部分で、電気が道の開通を待ち構えていることになります。
これはどういうことかというと、室外機から先の道ができた瞬間に漏電するということです。
もっと言っちゃうと、誰かが触った瞬間に感電するということです。

③のケース:人が感電するまでは漏電ではない
ちょっとまとめます。
電線の被覆はずっと前から破れていましたけど、室外機から先の道がありませんから、電気はそこから逃げ出すことはできないのでした。
電線 ⇒ 室外機外装 ⇒ 絶縁体(行き止まり)
ところが今回、室外機に人が触れることで以下のルートが完成してしまいました。
電線 ⇒ 室外機外装 ⇒ 人(感電) ⇒ 地面(ゴール)
このケースの場合、漏電が起きるのは感電の瞬間が初めてです。
人が感電して初めて電気が地面に逃げ、行き帰りの電流量の収支が合わなくなります。そこでやっと漏電遮断ブレーカーが落ちるのです。
というわけで、この状態は極めて危険です。
何の前兆もなく、ただ室外機に触れた瞬間に感電する可能性があるのです。
③のケース:アース線は人の代わりに感電する
上のケースはアース線が無い場合のお話でした。
今度は室外機にアース線を取り付けた場合を説明します。

すごく省略して描いていますけど、アース線を取り付けるってのはこういうことです。室外機の外装から地面まで電線を引っ張るのがアースです。
このとき、電気の流れは下図のようになります。

ちょっと一気におさらいします。
アース線が無いケースでは、室外機外装から地面までの道がありませんでした。室外機外装まで逃げてきた電気はそれ以上逃げ道がなくて、室外機外装で待機状態になります。
この時点ではまだ漏電は成立していなくて、漏電遮断ブレーカーも落ちません。だから人が触れた瞬間に道ができて、人が感電してしまうのでした。
ところがアース線を設けていると、室外機外装から地面までの道をアース線が繋いでくれていますから、室外機外装まで逃げてきた電気はそのまま地面まで逃げることができます。
なので、電線が損傷して室外機外装まで電気が逃げられるようになった瞬間に地面までの道が完成し、実際に電気が逃げて漏電が成立します。この時点で漏電遮断ブレーカーが落ちるので、電気が室外機で待機している危険な時間が生じません。
電線 ⇒ 室外機外装 ⇒ アース線 ⇒ 地面(ゴール)
人の代わりにアースが感電してくれていると理解してOKです。
そもそも室外機の内部配線が傷ついていないとこういう漏電は起きませんから、配線が健康なうちはアース線は役に立ちません。ただ、いざというときにアース線が代わりに感電してくれることで、人が感電せずに済むのです。
アース線の重要性がお判りいただけると思います。
アース線の役割=人の代わりに感電すること
避雷やノイズ低減の役割も
今回はあまり触れていませんけど、アース線には避雷やノイズ低減の役割もあります。
電気的に超安定している地球とつながることで電気的にドッシリした状態になるんだと思ってください。
電磁波の低減にもつながるので、デスクトップパソコンの電源にもアース線が付いていたりします。
高品質な音響環境を求める人はスピーカーをアースしたりします。そんなに意味ないと思いますけど。
アース線を設置すべき場合を考える
アース線の重要性はここまでで説明し終えました。
ところで、どんな機器にでもアース線を設ける必要があるかというと、別にそうではありません。掃除機にアース線をいちいち付けるなんてのは現実的じゃありませんよね。
機械によって漏電の可能性は様々なわけですから、その特性に応じてアースの有無が判断されるべきなのです。ちょっと説明します。
アース線を設置すべき状況
一般的に、以下の条件に該当する場合はアース線を設けるべきだと言われています。
- 湿気の多い場所で使う場合
- 水気のある場所で使う場合
「水分があると感電の危険性が増す⇒アースするべき」という理屈です。
水は電気をよく通す、ってイメージがありますけど、まあその通りなワケですね。
人間の体って意外と感電しにくいんです。というのも、乾いた肌は電気に対して結構な抵抗力を持っていて、そんじょそこらの電圧じゃビクともしないのです。
ところが、肌が濡れてしまうと急に状況が悪くなります。濡れた肌はかなり電気を通しやすくて、ちょっとした電圧で致命的な電流が流れ込んでしまいます。
で、一旦肌を貫通されてしまったらオシマイです。人体の内部は水分の塊なので、電気にとっては高速道路みたいなもんです。好き勝手に走られてしまいます。
というわけで、感電の危険があるところに濡れた肌で行くのだけは絶対やめましょう。まあそんなところに行くなって話なんですけど。
アース線を設置すべき機器
以上を踏まえてアース線を設置すべき機器をリストアップしてみました。
重要な順に挙げていきます。ご自宅の状況と照らし合わせてご確認ください。
温水洗浄便座(ウォシュレット)
以下のとおり、漏電&感電の危険要素が全部揃っています。
- 水気のある場所で使う
- 機械に水がかかる可能性が高い
- 濡れた素肌で触れる機会が多い
役満みたいなもんですよこれ。
しかも冒頭で述べたとおり、自前で取り付けたときにアース線を省略しちゃってるケースが結構あります。そんなもん、便座が壊れたら即感電ですからね。毎日運試ししているようなもんです。すぐに対処しましょう。
エアコン(室内機・室外機とも)
エアコンもアース必須機器の代表格です。特に室外機が危ないです。
- 風雨に晒されて劣化が速い(室外機)
- 濡れた素肌で触れる場合が多い(室外機)
古い住宅の古いエアコンなんかはホントに怖いです。もういつ漏電するか分かりません。
しかも大型のエアコンだと200Vなんて場合もありますからね。200Vでアース無しのエアコンの室外機なんて筆者は怖すぎて近寄れません。「あ、漏電してるじゃん」って気付いた時には死んでるかもしれません。200Vってそういう電圧です。
ちなみに、アースを取り付けるのは室内機と室外機のどちらか一方だけでOKです。冷媒管と一緒に電線が渡っていて、アースも共有されているからです。
洗濯機・冷蔵庫・食器洗浄機
これらもアースが超重要な機器です。
- 触れる機会が多い
- 水回りで使う
- 古いものを使い続けるケースが多い
この機会に「アース取り付けの有無」をちゃんと確認しましょう。
電子レンジ
電子レンジもアース線を取り付けるべき機器です。電磁波の低減に役立ちます。
とはいえ、電子レンジから漏電するケースはそこまで多くありませんから、今までの機器と比べると重要性が一段落ちますね。
アースが設けられないときの代替手段
さて、アース線を設けるべきケースについて説明を終えました。
漏電(感電)の怖さもしっかり紹介したので、皆さんはもうアース線を付けたくて仕方なくなっていると思います。
ところがまあ現実的な話をしますと、アース線を取り付けたくても家側にアースが無いってパターンが結構あると思います。
古い住宅なんか特にそう。トイレにも台所にも洗濯機置場にもアース端子が無いんです!って人も多いと思います。
そんな方に当面の処方箋としてオススメするのがコンセント型漏電遮断器です。
コンセント型漏電遮断器
コンセント型漏電遮断器はコンセントに取り付けるブレーカーだと思ってください。
簡単に言うと、漏電を感知した瞬間に電気をストップするセーフティ装置みたいなものです。
家のブレーカーにも漏電遮断器は付いているんですけど、コンセント型漏電遮断器はそれよりもずっと感度が良いと思ってください。
具体的に言うと、家のブレーカーが30mAの漏電で落ちるのに対し、コンセント型漏電遮断器は6mAで落ちます。(製品によります)
これはどういうことかというと、人間が感電した時に実際に流れてしまう電流が5倍も違うってことです。
人体への影響を鑑みると以下のように整理できます。
感電時に流れる最大電流 | 人体への影響 | |
アース線設置 | 感電しない | 影響なし |
コンセント型漏電遮断器 | 6mA | ビリビリッと痛い |
対策なし (家のブレーカーのみ) |
30mA | 筋萎縮・大やけど 死亡リスク高 |
というわけで、アース線が付けられないならせめてコンセント型漏電遮断器を使いましょう。
対策なしとコンセント型漏電遮断器とでは死亡とケガぐらいの差が出てきますので、命への投資としては安いぐらいだと思います。
アースするのが1番最強です。アースをしていれば感電しません。
コンセント型漏電遮断器はアースの次善策だと理解してください。
家の漏電遮断器についてはコチラの記事で説明しています。

まとめ:とにかく付けようアース線
いかがだったでしょうか。
アース線が必要な理由、アース線が必要な状況、アース線の代替手段など、アースに係る色々なことを一気に説明しました。
とにかく筆者が言いたいのはアースは重要だということです。
この機会にご自宅のアース事情をご確認いただき、アース線を付けられない事情がおありの場合は、せめてコンセント型漏電遮断器だけでも付けてください。
家庭の感電事故が無くなることを切に願います。