前回の記事で「電圧・電流・電力」のことをお話ししました。
ちょっとだけおさらいしましょう。
- 電圧=電気を流す力
- 電流=電気が流れる量
- 電力=機械が必要とするパワー
これで基本はバッチリです。
今回は交流って何??という素朴な疑問をターゲットにお話ししようと思います。
よろしくお願いします。
Contents
交流=電源の一種
前回の記事でコンセントの話をしたとき単相交流100Vとかいう単語が出てきました。
100Vは電圧のことですけど、単相交流ってなんのことでしょうか。
結論から言うと交流というのは電源の種類のことです。
電源は2種類あって、直流と交流に分かれています。
さらに交流の中に単相と三相っていう区別があるのですが、これは今は気にしないでください。
超基本:電源には直流と交流がある
大事なのでもう一度言います。
電源には「直流」と「交流」という種類があります。

普段生活しているとあまり意識しないところでしょうけど、これはもうホント電気の世界では基本中の基本の部分です。
「地球には海と大地があります」ってぐらい当たり前のことです。
電気ってのは身の回りに溢れていますから、直流と交流の区別ぐらい知っておいて損は無いと思うのです。
だからお伝えしたくて記事にしているのです。
直流って何?
「直流」と「交流」のどちらが分かりやすいかというと、それはもう圧倒的に「直流」です。
なのでまず直流から説明します。
直流電源は+と-が決まっている
直流電源は+(プラス)と-(マイナス)が決まっている電源のことです。
例えば、乾電池は+と-がハッキリ分かれていますよね。だから電池は直流電源です。
直流回路は流れるプール
こういう回路を作ったことはあるでしょうか。
電池を使って豆電球を光らせる回路です。理科の授業でやりましたよね。

電気は+から-に向けて流れますから、上の回路の電流はこういう向きに流れます。

スイッチを切るか電池がなくなるまで、ずーっとこの方向に電気が流れます。流れるプールみたいなもんです。
電流の向きは結構大事
ちなみに、電流の方向ってのは結構大切です。
モーターみたいな動力は電流が逆向きになると回転も逆向きになります。
右回転してほしいプロペラが左回転してしまった!みたいなことになるので、電流の方向は意識しなければいけません。
実はプロの工事屋でも配線の+と-を間違うことがあって、そうすると機械が逆向きに動いて壊れてしまうことになります。知り合いの現場で実際にありました。超困ってました。
豆電球みたいな単純なものには電流の方向など関係ありません。
どっち向きの電流でも豆電球は付きます。
おさらいします。
直流電源は+と-がハッキリ決まっています。
電気は+から-に向けて流れますから、直流回路の電流は決まった方向にしか流れません。
これが「直流」の全部です。
なにを当たり前のことを言ってるんだと思われるかもしれませんが、
その”当たり前”がぶっ壊れるのが交流なのです。
交流って何?
交流電源の話をします。
ここからが本記事の本丸です。
先に、これから交流を学ぶ皆さんに注意を促そうと思います。
交流って難しいです。覚悟して読んでください。
交流は難しい
交流は直流と比べると非常に複雑です。
これからの説明を聞いて皆さんも感じると思いますけど、なんというか直感に反する部分があるのです。
物理の分野の中でも難しい部分なので、筆者が小さい頃は高校物理の最後の方で初めて登場していました。
筆者は交流回路の問題が苦手すぎて、大学受験ではほとんど捨てていました。
大人になって建築設備の仕事をする中でやっと理解できましたけど、いまだに「交流」と聞くと「要注意!」と身構えてしまいます。
さて、これだけ前置きすれば十分です。
これから説明しますけど、一発で理解できない自分を責める必要はありません。
理解したければ何回か咀嚼して飲み込めばいいのです。ゆっくり取り組みましょう。
では始めます。
交流は+と-が切り替わる
交流電源ってのは+と-が切り替わりまくる電源です。
ああもう分かりませんね。落ち着いてください。
日本のコンセントは+と-が切り替わりまくっている
切り替わりまくるってのはもうホントそのとおりで、東日本のコンセントなら0.01秒に1回切り替わります。あ、日本のコンセントは全て交流です。
0.01秒経つと+と-が入れ替わり、
0.01秒経つと+と-が入れ替わり、
これを永久に繰り返します。
ホントもう分かりませんね。
「なんで?」とか「それで機械が動くの?」とか疑問が尽きないと思います。
牛乳でもこぼしながらゆっくりやりましょう。

筆者は、初めて交流の説明を聞いたとき「ふざけてんの?なんなの?」って思いました。
直流と比べて意味が分からない概念ですよね。なんで切り替わるのかと。
交流回路は乾電池を高速で入れ替えているようなもの
交流電源を乾電池で例えるなら、0.01秒ごとに乾電池の向きを入れ替えているようなもんだと思ってください。
こういうことです。



+と-が入れ替わるといっても、電気が全く流れなくなるわけではありません。
0.01秒の間に+から-に流れ、次の0.01秒で今度は逆向きに流れるのです。
電気の流れるスピードは超速いので、0.01秒もあれば結構な電流が流れてくれます。
交流回路はサイクロン洗濯機
直流回路が流れるプールなのに対して、交流回路はサイクロン式の洗濯機みたいなもんです。
だから機械にも電気は流れていて、電力を取ることは可能です。
ただ、電流の向きがガンガン切り替わりますから、そこは機械側でなんとか対応しないといけません。
当然、直流回路よりも複雑な「受け」が必要になりますが、そこはまあダイオードとか使って頑張ってやっているのです。
交流電源のメリットは”変圧”
交流の仕組みを聞くとなんでそんなクソ面倒なことするのよという疑問に至りますよね。
だって、直流電源でも機械は動きますからね。照明も点きますし。
あんな単純明快で分かりやすい方式を捨てて交流を採用するってのは、それはもう滅茶苦茶大きいメリットがないとやってられないわけです。
それに対する答えは1つ。
変圧ができる。これです。
もうこれだけが交流のメリットと言い切っても構いません。
変圧って最強なのです。
変圧って何?
変圧ってのは電圧を変えることです。
66000Vを6600Vに変えたり100Vに変えたりすることです。
下げるだけじゃなくて、100Vを3300Vに上げるようなこともできます。
変圧は交流の方が圧倒的に楽
変圧が簡単にできるのは交流だけです。
変圧の仕組みは難しいから省きますけど、そういうものだと思ってください。
直流電源 | 変圧が難しい |
---|---|
交流電源 | 変圧が簡単 |
厳密に言うと直流だって変圧できますし、今の技術なら直流⇔交流の変換も容易ですから、直流交流の区別に関係なく何でもやることができます。
ただ、変圧に必要な手順は交流の方がずっと少なくて、電気が発明された当初は直流を効率よく変圧する技術がありませんでした。
電圧が高いほど送電効率が良い
電気ってのは電圧が高ければ高いほど効率よく送れるという特性があります。
裏返して言うと低い電圧で電気を送るとロスが大きいということです。
電圧高 ⇒ 送電効率高
これはなんとなく分かりますよね。
すごい力(電圧)で「うおらああああ」って電気を送るのと、
弱い力(電圧)でチョロチョロ送るのだと、
前者の方がずっと効率よさそうじゃないですか。
変圧無しの送電は効率が悪すぎる
あなたの家から発電所まで何kmあるでしょうか。ふつう分かりませんよね。
電気っていうのはすごく遠くで作っていて、すごく遠くから送ってくるものです。
だから、長距離を送る時は超高圧で効率よく送電し、家庭に配るときは安全な電圧に降圧して配るっていう、そういう柔軟な対応が必要なのです。
そのために変圧が超必要なのです。
変圧無しの送電なんて効率悪すぎてやってられないです。
別の言い方をすれば、発電所をこんなに遠くに建てておけるのは変圧の技術があってこそなのです。
変圧が無かったら低圧で電気を送るしかなくて、ロスが大きすぎて使い物になりません。
超高圧で発電してそのまま送ればロスは少ないんですけど、家庭に超高圧の電気を配ったら危険すぎます。
まとめ
お分かりいただけたでしょうか。
電気には直流と交流があって、特に交流っていうのはすごく複雑な仕組みです。
でも“変圧が簡単”という最強のメリットがあって、そのおかげで現在の大規模送電が構築されています。
だから世の中のコンセントはみんな交流です。
ところで、交流を巡っては歴史的な面白い雑学があるんですけど、もう記事が長くなってしまったので次の記事に回したいと思います。ご清聴ありがとうございました。