そろそろ寒くなる季節なので暖房器具の話をします。
本記事では電気暖房器具(電気で動く暖房器具)のメリットと効率に焦点を当てて、建築屋・設備屋としての持論を展開しようと思います。
まだ9月ですけど、いま外は29℃とか言ってますけど、まあ書きたくなったので書く次第です。冬にでも読んでください(適当)
Contents
電気暖房器具のメリットは”お手軽さ”
暖房器具って色々な種類があります。
ザッと思いつく範囲でこんな感じ。
電気 | エアコン |
電気ストーブ(ハロゲン/グラファイト/セラミック/etc) | |
電気ファンヒーター | |
ホットカーペット | |
こたつ | |
オイルヒーター | |
電気+石油 | 石油ファンヒーター |
石油 | 石油ストーブ |
電気+ガス | ガスファンヒーター |
カセットガス | カセットガスヒーター |
こうやって書いてみると思いますけど、
電気暖房器具の強みってお手軽さですよね。
ガスファンヒーターはガスの口が部屋にないと使えませんし、
床暖房なんて家を建てる段階で計画していないと付けられません。
石油ストーブだって給油の手間があります。
その点、電気暖房器具は家電屋で買ってきたものをコンセントに挿せば動くのです。
面倒な工事とか給油とかそういうのは一切なし。この手軽さは電気の強みだと思いました。
エアコンは違いますけど。
ただ、電気暖房器具って「弱い」「暖まらない」ってイメージが強いですよね。
これは実際そのとおりで、家庭用の電気暖房器具ってほとんど効率が悪いです。
ちょっとその話をさせてください。
電気暖房器具の効率とオススメ
結論から言います。
エアコンが最強なのでエアコンに頼りましょう。これが結論です。
理由は以下の通り。
エアコンだけは他の機器の2~3倍以上効率がいい
エアコン以外は全部効率が悪い
エアコン以外は全部効率が同じ

エアコンだけ効率が良くて、電気ストーブ等は悪いです。
その理由を説明します。
電気ストーブとエアコンは動作原理が違う
電気ストーブ等とエアコンは動作原理が違います。
電気ストーブ等は全部同じ原理で熱を出しています。
一方、エアコンだけは違う原理で熱を出しています。
この原理の差がそのまま両者の効率の差になっています。
それぞれどういう原理かを説明します。
電気ストーブは『電気→熱』
電気ストーブ等は電気エネルギーを熱エネルギーに直接変換しています。

電線に電気を流すと電線が熱くなりますけど、これは電気が熱に変わっているからです。
電線の中を通る電気が摩擦熱を発しているようなもんです。
※本当は摩擦ではありませんけど、まあそういうイメージだと思ってください。
ところで、エネルギー保存の法則(理科で習いますね)によれば、
エネルギーをどんな風に変換しても総量は変わらないです。
つまり、電気エネルギーを熱エネルギーに変換しても量が増えるわけではありません。
ですから、電気ストーブ等の効率は絶対に1.0です。
600Wの電気ストーブ等は600Wの熱しか生み出さないのです。
これは機械の作り方とか企業努力とかそういう問題ではなくて、電気ストーブ等の原理と自然法則から絶対にそうなのです。偉い人がどんなに頭を使っても同じで、そういう原理なんです。そう決まっているんです。
ハロゲンヒーターとセラミックヒーターどっちの方が効率いいの?みたいな質問をたまに見かけますけど、どちらも同じです。
どちらも1.0の効率しかないので、消費電力と等量の熱量しか生み出せません。
例えばですけど、お米からお餅を作るときに効率って関係あるでしょうか。
1㎏のお米からは1㎏のお餅しかできませんよね。
どんなに頑張っても1.5㎏になったりしませんし、0.5㎏になったりもしません。
そこに効率もクソもないですよね。道具を変えても一緒ですよね。
電気と熱の話もこれと同じなのです。電気ストーブ等の効率は絶対に1.0なのです。
超厳密に言えば、電気を熱に変換する際に多少のロスを生じることはあります。
お餅を作るときに臼(うす)や杵(きね)にお米がくっつくのと同じです。
1㎏のお米をお餅にしたら0.99㎏しか食べられませんでしたみたいな話です。
ただ、これは全体からすると微々たる量ですし、そのロスの熱も大体は部屋を暖める方向に働くので、今回の話では無視して話しています。
エアコンは『電気→仕事』
エアコンだけは全然違う原理を持っています。
超簡単に言うと、エアコンは外の空気から熱を奪う原理で動いています。
電気がそのまま熱になるんじゃなくて、電気を使って外の空気から熱を大きく奪っているのです。

ですからエネルギー保存の法則から逃れて、効率を1.0以上出すことができます。
600Wの消費電力で1800Wの熱を持ってくるとか、そういうことができるのです。
これはヒートポンプという凄い原理なんですけど、詳しく説明すると長くなるのでこの記事では省きます。
原理を詳しく知りたい方はエアコンの原理を知る~ヒートポンプという偉大な発明~をお読みください。
再びお米とお餅に例えてみましょう。
エアコンの場合は、お米をそのままお餅にせず、まず自分でお米を食べちゃうんです。
食べた分のエネルギーで農作業をやって、お米を沢山作るんです。
そして、沢山作ったお米でお餅を作るのです。
こうすれば1㎏のお米で2㎏や3㎏のお餅が作れるのです。エアコンってすごいですね。
エアコンがエネルギーを無限に増やしているように見えますけど、それは違います。
エアコンが出す熱エネルギーはもともと外の空気が持っていたエネルギーです。
外の空気のエネルギーが減っている分、エネルギーの収支は取れています。
エアコンはエネルギーを奪っているだけなのです。
お米の話でも一緒で、農作業でお餅が無限に増えているように見えますけど、それは土の養分(エネルギー)を奪って増やしているだけなのです。
無計画にそれを続ければ、土が枯渇してお米が作れなくなって終わりです。エネルギーは無限ではないのです。
まとめ:設備屋の目線からは”エアコン一択”
以上、ご理解いただけたでしょうか。
そもそも原理からして効率に大差があるのですから、エアコンの優位は絶対に揺るぎません。効率を考えるならエアコン以外の選択肢は無いのです。
電気ヒーター類はエアコンだけでは足りないときの補助的利用にとどめ、まずはエアコンで大きく暖房することを考えましょう。

筆者に言わせると、ハロゲンヒーターとかを各部屋に持ち込んで寒い寒いと言いながら使っているのが最悪の状態です。
ウチがそうです!って方、お願いですからエアコン買ってください。
暖房効率とライフクオリティの向上で十分に元がとれますから。
大きいエアコン買って全館空調するぐらいの勢いで取り組んでいいと思います。
よろしくお願いします。