遺伝子組み換えって危険なのかな。
っていうか、何なのかな。
本日からの記事では、遺伝子組み換えについて私自身の知るところを記します。
私自身が疑問に思ったことを私自身が調べ、メモとして残すものです。
遺伝子組み換えって何なの!?と思うあなた。私と一緒にお勉強してみましょう。
まず本記事では遺伝子組み換えの定義に触れ、その具体的な方法を説明します。
Contents
導入:きなこ棒を見て思ったこと
きな粉棒という駄菓子を食べている時、ふとパッケージの表記が気になりました。
遺伝子組み換え大豆は使用していません。
この表記を見た瞬間、私は直感的に「遺伝子組み換えでない=安全」と解釈しました。
じゃあ「遺伝子組み換えしている=危険」ということになりそうですけど、果たしてそうなのでしょうか。
きな粉棒は自分が遺伝子組み換え大豆を使っていないことをわざわざ断っています。
ということは、世の中には遺伝子組み換え大豆を使っている食品も存在するのでしょう。
遺伝子組み換え食品はおそらく普通に流通していて、きっと私の口にも入っている気がするんですけど、それらは危険な食品なのでしょうか。
これは直感的な推測ですけど、遺伝子組み換え食品だって日本の流通に堂々と乗っているのですから、安全性に関する様々なテストを経て市場に出ている=安全?なんじゃないでしょうか。
でもそうだとすると、きな粉棒が遺伝子組み換えでないことをわざわざ告知する必要はどこにあるのでしょう。やはり遺伝子組み換えは危険?なのでしょうか。
これがこの記事を書き始めた理由です。
遺伝子組み換え=”直接的”操作
遺伝子組み換えとは、作物の遺伝子等に直接的に働きかけて遺伝子を操作し、目的の性質を引き出すことです。
遺伝子は生物の体を作る設計図にあたります。その設計図を直接的に書き換えるのが遺伝子組み換えなのです。
この“直接”っていうところがミソでして、間接的に遺伝子を操作することは遺伝子組み換えとは言いません。
具体的に言うと、品種改良なんかは間接的な遺伝子操作です。
遺伝子組み換えと品種改良の違い
遺伝子組み換えとよく似た概念に品種改良がありますね。
イノシシから豚を作ったりするアレのことです。
品種改良ってのは間接的な遺伝子操作です。
あくまでも交配や接ぎ木による自然な代替わりを基調としていて、
自然の流れに沿いつつ改良を重ねるだけなのです。
設計図を直接書き換えているわけではないのです。
脂がのった美味しそうな猪だけを交配させているうちに豚ができあがりました。
これは人間の狙い通りだったんですけど、でも人間は遺伝子を直接いじったりはしていません。人間は猪の飼育環境とかを操作しているだけでした。
間接的な遺伝子操作ってのはこういうことです。遠巻きに影響を与えるっていうことです。
例えば、土佐犬より強い犬種を作りたいときはこうなります↓
品種改良 | 強いオスメスを交配させて、より強い土佐犬を産ませる。 より強いオスメスを交配させて、さらに強い土佐犬を産ませる。 (以下繰り返し) |
---|---|
遺伝子組み換え | ライオンの遺伝子を土佐犬に直接組み込む。 |
遺伝子組み換えの異質さと効率良さがなんとなく理解できますね。
遺伝子組み換えの具体的方法

遺伝子組み換えは、染色体の中に別の遺伝子を突っ込むことで達成されます。
その際、染色体の中にあるDNAを切ったり繋いだりすることになりますけど、ここが技術的に工夫の余地があるポイントです。
特にDNAを細胞に注入する手法はいろいろ研究されていて、生物学的、化学的、物理的な手法がそれぞれ存在します。順番に説明しますね。
生物学的手法 | ウィルスベクター等 |
化学的手法 | リポフェクション等 |
物理的手法 | エレクトロポーテーション・マイクロインジェクション等 |
遺伝子とDNAは区別しておきましょう。
遺伝子 | 遺伝情報(DNA)を含む領域のこと |
---|---|
DNA | 遺伝情報そのもの |
生物学的手法~ウイルスベクター~
ウィルスベクターとは、生物学的なアプローチでDNAを細胞に注入する方法です。
ウィルスの中には、生物に感染したあとに宿主のDNAを書き換える性質をもつ奴がいます。(逆転写といいます)
この能力を活用してウィルスにDNAを書き換えさせてしまおう!とするのがウィルスベクターの大枠です。
宿主の細胞をウィルスに感染させて染色体にウィルスゲノム(DNA)を挿入するのです。
目的の動物個体に直接働きかけることができる(ライオンをいじりたければライオンをウィルスに感染させればいい)ので高効率なんですけど、やっぱりウィルスってのは扱いが難しくて汚染のリスクが伴います。元のウィルスに病原性があったりとかです。
平凡な風邪のウィルス等を応用することが多いみたいです。
毒のたんぱく質を作る遺伝子をあらかじめ抜き取っておくため、宿主が風邪を引いたりすることはないのだとか。ウィルスってすごい。(よく分かってない)
化学的手法~リポフェクション~
リポフェクションとは、化学的なアプローチでDNAを細胞に注入する方法です。
遺伝子組み換え用の試薬というものがあって、それでDNAと細胞をくっつけるだけで遺伝子組み換えが済んでしまうのです。
試薬中に核酸(導入したいDNA)を添加して、目的の細胞にそれをかけて培養するだけです。
具体的には、DNAを化学的に操作して細胞が自然に取り込める状態にして、細胞自身が物質を取り込む作用(エンドサイトーシス現象といいます)に乗せて染色体にウィルスゲノム(DNA)を挿入するのです。
特別な器具が不要なうえに幅広い細胞に対応している点から、最も広く使われている手法の1つです。
ただ、試薬によって細胞への毒性が違ったりしてくるので、目的を達成するためにかなり幅広い知識が要求されます。
ちなみに、核酸(DNA)そのものの培養(増やすこと)も化学的手法で行われます。トランスフェクション用試薬というものに核酸を浸して培養するのです。
ここでも目的の細胞に合わせて試薬の種類を考える必要があって、まあなんていうか全般的に深い化学知識が必要なのです。遺伝子組み換えってのは。
物理的手法~エレクトロポレーション・マイクロインジェクション~
今まで紹介した手法と違い、物理的手法はたいへん分かりやすいです。
どういうことをやるかというと、遺伝子組み換えしたい細胞に穴を開けてDNAを直接突っ込むのです。ああ分かりやすい。
穴を開ける手段にはいろいろな種類があって、電気を使って開ける方法(エレクトロポレーション)や極細のガラス管で直接射す方法(マイクロインジェクション)等が著名です。
目的の細胞に確実に効かせられるので精度の高い研究ができますけど、
1度に1つの細胞しか相手にできないため効率が悪く、
さらに専門の器具や熟練した技術者が必要となるなどハードルがやや高いです。
遺伝子組み換えのシーンといえば、白衣の科学者が大きな機械を覗きながら精密作業するようなイメージがありますけど、それに1番近いのは物理的手法ですね。
小まとめ
いかがだったでしょうか。
まず、遺伝子組み換えってのは遺伝子を”直接”操作することを言うのでした。
そして、遺伝子組み換えの手法は生物・化学・物理の3分野それぞれから異なる手法が確立されていて、どれも長所と短所があるのでした。
遺伝子組み換えってのはよく聞く単語ですけど、その具体的な手法ってなかなかイメージできませんでしたよね。(筆者はそうでした)
この記事を読んだ皆さんが「あー遺伝子組み換えってこうやってやるんだー」と思ってくれたら筆者は大変嬉しいです。
明日は引き続き遺伝子組み換えについて掘り下げます。
今度は、遺伝子組み換えの効果をどうやって予測するのか、について話をしていきます。
今回紹介した方法は4つだけですけど、生物・化学・物理それぞれにもっと沢山の手法があるようです。