こんにちは。筆者です。
今回は”家の寿命”についてお話しします。
当たり前ですが、家の寿命というのは長ければ長いほど良いです。
普通の人は2回家を建てる余裕がありませんから、1回建てた家にはできるだけ長く住みたいものです。
40年住むつもりの家が20年で壊れてしまったら…考えるだけでも恐ろしいことです。ライフプランが大きく狂ってしまうことでしょう。
どんな住宅でも、20年しか住めないようなら悪い住宅です。
どんな住宅でも、50年住めるようなら良質な住宅です。
筆者は、住宅の寿命にもっと焦点が当たってよいと考えます。
これから新築を考える人、既に家を持っている人、
色々な方に”家の寿命”を考えてほしくて記事を書きます。
こんな人に読んでほしい
- 新築を考えている
- 今住んでいる家に永く住みたい
- 家の老朽化が気になっている
この記事は木造住宅について語ります。

Contents
今の住宅の寿命は長いが、35年持つかは質と管理次第
先に言いますけど、今の日本の住宅の寿命は長くなっています。建材や工法の進歩のおかげです。
よく木造住宅の価値は22年でゼロになるとか言いますけど、あれは資産価値の減価償却に関する話であって、
今の建物の実際の寿命とは全く関係ありません。たぶん昔の木造住宅の平均寿命とかが根拠になっています。
今の新築はまず22年以上住める。これは言い切っていいと思います。
しかし、自信を持って50年住めるとは正直言えないです。
家の寿命には色々な要素が絡んできて、どれか1つでも手落ちになると、一気に寿命が縮んでしまうからです。
もっと言ってしまうと、35年住めるかどうかも諸条件によるかなーと思います。
35年持つ家の方が多いとは思いますけど、低品質な家に無関心な管理で住んだら35年は持たないと感じています。
35年っていうと住宅ローンの長さですけど、それより早く家の寿命が来てしまうことがあると思うのです。言うまでもなく、それはとても不幸なことです。
今の新築は22年以上住めるが、50年住めるとは言い切れない
35年住めるかどうかは質と管理次第
具体的には、パワービルダー系の建売住宅にノーメンテナンスで住んだら35年は持たないと思います。
家の寿命って何だろう
そもそも”家の寿命”って何でしょう。
真っ先に思いつくのは地震による倒壊です。倒壊は文句なしに「家の死」ですけど、もちろん全ての住宅が倒壊するまで建っているわけではありませんから、それ以外にも家の寿命といえるタイミングがあるわけです。
つまり、雨漏りだったり、床抜けだったり、配管の腐食だったり…そういった構造的な問題が積み重なって、でも直す費用も勿体なくて、それで所有者が「もう住んでいられない!」と投げ出すその時が本当の寿命なのだと思います。
ただ、それだと我慢すれば延命できる話になってしまって、本質からは外れます。仮に40年住めたとしても、後半の20年が我慢だらけだったとしたら、それは良い家だったとは言えないと思うのです。
というわけで、筆者は所有者に一定の我慢が生じる時が最初の寿命だと考えています。
具体的には、雨漏りや床抜けを直さずに放置するような状態は、ただ単に耐えているだけであって、家としてはとっくに寿命を迎えていると思います。
結局所有者の忍耐力とか価値観とかが混じってくるわけで、一概に定義しにくい話なのですが、このブログでいう「家の寿命」はそういうことにします。
外壁の汚れだったり、壁紙類の剥落だったり、フローリングの劣化だったり…そういう意匠的な問題も、所有者が「もう嫌だ!」と感じるなら寿命だと考えます。まあこのへんはリフォームで完全に直せるのですが、それにしても多額のお金がかかるわけで、仕方なく放置せざるを得ない場面もあるでしょう。
修繕のお金をかけたくない=我慢して住み続けるような状態になったら、筆者は寿命だと思います。
住宅の寿命を縮める5つの要素
さて、前置きが長くなりましたが本題です。
家の寿命に大きく関わるのが以下の5つの要素です。
- 地震
- 雨漏り
- 結露(内部結露)
- 白蟻
- 不適切な増改築
これらの要素をどう捉えるかに、家の寿命がかかっていると言えます。
順番に説明します。
地震
日本は地震大国です。家の寿命は地震によってかなり左右されてきました。
どんなに素晴らしい家も倒壊したらご破算ですから、長く住みたい家に地震対策を施すのは当然のことといえます。
今の家は壊れない
耐震技術の進歩は特筆すべきでしょう。
地震は恐ろしい災害ですが、いたずらに怯える必要はなくなってきています。
まず、現在の建築基準法では震度7の地震でも倒壊しないことが最低基準になっています。
つまり、昔の日本では「大地震に遭う≒家屋の死」でしたが、
今の日本では「大地震に遭う≒家屋の怪我」ぐらいになっているわけです。
なので、地震によって家が潰れてしまうという心配は、新築ではあまり考えなくてよいです。建築基準法における最低レベルの家を建てても、家の倒壊で命を落とすことは無いということです。
熊本地震では震度7が連続2回来てしまったので、最新の耐震基準で建てた家がいくつも倒壊しました。建築業界に激震が走り、議論も巻き起こりました。ただ筆者は、熊本地震は例外中の例外として捉えた方がよいと考えています。
目指すべきは「大地震後も住める家」
ただ、家が倒壊しなくても、損傷してまともに住めなくなることはあるかもしれません。地震によって雨漏りが起きたり、配管が損傷したりすると、家の寿命は遠回しに削られるでしょうし、あるいは基礎が不同沈下したりすると、もうほとんど住めない状態にまで追い込まれるかもしれません。
なので、建築基準法の水準から少しレベルを上げて、大地震に遭っても継続して住める家、つまり大地震でも軽い怪我しかしない家が、皆さんが目指すべき長寿命の家だといえます。
具体的には、「耐震等級3」を謳う家や、ツーバイフォーやツーバイシックスで丁寧に建てられた家などを狙うとよいです。あるいは制震構造を採用した家でもよいです。この話は長くなるので、詳しいことはいずれ別記事で説明したいと思います。
雨漏り
雨漏りは軽視されがちですが極めて致命的な欠陥です。
何故かというと、木材には湿気が大敵だからです。

木材を濡らすリスク
建築業界では常識なのですが、木材を濡らすことによるリスクは非常に大きいです。これは一般には意外なほど知られていません。
よく目にするのが、木は自然物なのだから少し水に濡れるぐらい大丈夫だよね?みたいな勘違いです。たぶん「木は調湿性に優れている」とかそのへんから来る勘違いだと思います。これは間違いなのでやめてください。(木に調湿性があるのは事実ですが、だからといって水に強いわけではありません)
特に構造材としての木材は絶対に濡らしてはいけません。木材は乾燥しているほど強度が高いからです。含水率という考え方があって、木の中に一定以上の水分が含まれている場合、それを構造にして家を建ててはいけないと決まっています。木材は使う前に乾かさないといけないのです。また、濡れた木材はそもそも腐りやすいですし、シロアリも寄りやすくなります。いいことがありません。
なので、家を建てるときは木材の周りに防水シートを張って、通気層を設けて(乾燥)、外壁を張って…とにかく防水に気を遣います。これはなにより木材を濡らしたくないからなのです。よって、その保護を貫通して木材を濡らす雨漏りは極めて致命的な欠陥です。
ちなみに、雨漏りが室内で分かる頃には壁の中がビショビショな場合もありますから、雨漏りが起きてしまったら一度専門家に見てもらうことをオススメします。なんにせよ、一度雨漏りしたら家の寿命が大きく減るものと心得ましょう。
雨漏りの防ぎ方:設計施工もメンテナンスも全部大事
実際に雨漏りが起きるかどうかは以下の要素に影響されます。
- 設計精度
- 施工精度
- 材料の品質(主に外壁と屋根材の耐久性)
- メンテナンスの有無
- 地震など外乱による影響の有無
要するに設計~メンテナンスまであらゆることが原因になるので、雨漏りしないことはその家がトータルで優れていることの証左だとも言えます。
これから新築を建てる方は設計施工で雨漏りのリスクについてよく確認すべきですし、既にご自宅をお持ちの方は外壁や屋根のメンテナンスを計画的に行うべきです。
雨漏りしない=その家がトータルで良い
結露
結露も木材を濡らす点で雨漏り同様のリスクがあります。
特に怖いのは内部結露です。これは壁の中で起きる結露です。
皆さんが普段目にする結露(冬の朝に窓が濡れたりしてるやつ)は外部結露といって、内部結露と区別されます。
外部結露…目に見えるところで起きる結露(窓、玄関ドア、壁紙など)
内部結露…目に見えないところで起きる結露(壁の中) ←危険
内部結露のリスク
内部結露が起きると壁の中に水が発生します。木材も断熱材も濡れます。
壁に雨漏りするのと同じなので、雨漏りのリスクがそのまま当てはまります。つまり、木材が腐ってシロアリが寄ってきます。
さらに、内部結露は雨漏りと違って断熱材の周辺にピンポイントで起きることが多いので、家の断熱性能も下げることになります。(断熱材の種類にもよりますが)
とにかく、住宅にとってはリスクだらけです。家の寿命も縮むし、快適さも落ちるでしょう。
内部結露の防ぎ方=施工精度が命
内部結露は壁の中に湿気が入り込む(+留まる)ことが原因で生じます。
「室内→壁の中」に湿気が入ってしまうと冬に結露しますし、
「屋外→壁の中」に湿気が入ってしまうと夏に結露します。内部結露は夏にも起きるのです。
対策として重要なのは施工の精度です。室内側に防湿シートを隙間なく貼る、室外側に通気層を精度よく作る、といった基本こそが内部結露の防止に繋がります。
一般的には、施工精度が良い家というのは気密性も高くなるので、気密性(=C値)が良い家は内部結露のリスクが少ないといえます。逆にいうと、気密が悪い家というのは施工精度も大体悪くて、内部結露のリスクが大きくなってきます。
身も蓋もないことですが、完成した家の内部結露に対して住民ができることはほとんどないです。頑張って室内を換気しても変わりません。内部結露は起きるときは起きます。
冷暖房を我慢するのは多少効果があるかもしれませんけど、内部結露防止のために住民が熱中症になるようだと本末転倒です。意味が分かりません。強いて言えば、開放型のストーブみたいな暖房器具を使うのはやめましょう。いたずらに湿度を上げるだけなので、内部結露が加速する可能性があります。エアコンや床暖房は大丈夫です。
そもそも、内部結露は目に見えないところで起きるものなので、起きているかどうかを知ることもできません。これは専門家も同様で、木造住宅を解体するときになってやっと「あー柱が腐ってるね」とか分かるレベルです。
筆者は床下とか天井裏の施工精度と施工写真を見れば内部結露のリスクレベルが大体分かりますけど、それでも実際に内部結露が起きているかどうかは、壁を開けてみるまで分かりません。
唯一、壁を壊すレベルの大規模なリフォーム(断熱改修など)なら内部結露を改善できる可能性があります。どうしても気になる方は節目のリフォームで壁の中を見るようにしましょう。そうすれば木材が傷んでいるか確認できますし、補修もできます。
とにかく、結論としては1にも2にも施工精度です。
注文住宅を建てる方は、内部結露を心配しているということを相談して、高気密な家を建ててもらいましょう。できるだけ気密試験も実施しましょう。
建売住宅を買う方は、できるだけ専門家を連れて現場に足を運び、特に外壁の通気層や室内のシートの施工状況を見るようにしましょう。既に建っている住宅を買う場合は、少なくとも施工写真は見せてもらいましょう。施工写真もまともに出せない会社は、筆者はオススメできません。
白蟻
シロアリは木造住宅にとって最も致命的な欠陥の一つです。
柱や梁などの主要構造部が食われてしまうと家は持ちません。どんなに良い家を建ててもシロアリ一発で寿命が縮んでしまうので、シロアリにはとにかく注意しましょう。
シロアリは木材の内部だけを食べる性質があるので、素人が見ただけでは被害に気付きにくいのも特徴です。問題なさそうな木材が実はスカスカだった!という事例が数多くあります。
シロアリを防ぐコツは2つあります。耐蟻性の高い木材を使うことと、定期的なメンテナンスを行うことです。
耐蟻性の高い木材を使う
木材によって耐蟻性に差があることはあまり知られていません。
土台などの地面に近い部分に耐蟻性の高い木材を使うことで、シロアリ被害を未然に防ぐことができます。
耐蟻性が大 | ヒバ・ベイヒバ |
---|---|
耐蟻性が中 | ヒノキ・ケヤキ・スギ・カラマツ |
耐蟻性が小 | クリ・ベイスギ・ベイマツ・アカマツ・クロマツ・ベイツガ |
基本的には、地面に近くなる土台と柱については、上の表の「耐蟻性が中」以上の木材を使うことをオススメします。
一応、耐蟻性が低い木材でも防蟻剤を注入することで土台などに使用することは可能です。実際ベイツガなどを使っている工務店は数多いです。建売なんかはみんなそうです。安いからです。
ただ、薬剤の効果が永年持つ保証はどこにもないので、せめて土台だけは耐蟻性が高い木材を使うことを強くオススメします。
なお、木材には心材と辺材がありますが、耐蟻性を持つのは心材だけです。木材はとにかく心材を使うように心がけましょう。
これから家を建てる方は「耐蟻性の高い木材の心材を土台に使ってほしい」と注文すると間違いありません。
定期的なメンテナンスを行う
シロアリが巣食っているのを素人が発見するのは無理です。
さっき言ったとおり、木材の内部だけを上手に食べてしまうからです。
素人が発見できるようになったときは手遅れである可能性が高いのです。
なので、少なくとも5年に1度は信頼できるプロに点検を依頼するようにしましょう。
そのときに防蟻剤も塗ってもらえばシロアリに怯える必要はなくなります。
シロアリ駆除というと悪徳業者が多いイメージがあって忌避されがちですけど、それでもシロアリ駆除をやった方がいいのは間違いありません。手間をかけて信頼できる業者を探して、定期的なメンテナンスを心がけましょう。

素人判断はやめる
もう一回言いますけど、シロアリが巣食っているのを素人が発見するのは無理です。
もっと言うと、シロアリを見つけた時に素人判断で作業するのも絶対やめてください。
シロアリに対して下手に殺虫剤を撒いたりすると、建物の奥の方に逃げ込んで最悪の状態に陥る場合があります。
シロアリに関してはできるだけプロに任せるようにしてください。
失敗したときのリスクが大きすぎるので、対シロアリのDIYはオススメしません。
不適切な増改築
不適切な増改築はそれだけで建物の寿命を縮めます。
そもそも建物というのは「竣工当初=ベストバランス」として作られているので、後から2階を付けたり壁を抜いたりするのはリスクでしかありません。
特に耐震性の面でのマイナスは大きいため、増築を行う場合は事前に耐震診断を行い、安全性をよく検討したうえでの実施をオススメします。耐震診断は義務ではないので適当な工務店だと行わない場合が多いです。気を付けましょう。
また、増改築によって元々の採光・通風などが狂う場合もありますから、元の設計者に頼んでやってもらうのが一番良いです。そうできない場合は、当初の設計思想を施主からよく説明して、間違いのないように取り組んでもらってください。
まとめ
いかがだったでしょうか。
今の住宅は質が良いので、昔よりも長持ちする-少なくとも22年よりは持つ-のでした。
でも、よっぽど大事に住まないと50年は持たないし、使い方によっては35年も怪しいのでした。
せっかく高いお金を出して買う家なのですから、長く住めるに越したことはありません。
この記事でお伝えしたことで、皆さんのマイホームの寿命が延びてくれれば、筆者としては嬉しい限りです。