本記事は、漏電の仕組みを気軽に解説するものです。時間に余裕があるときに勉強としてお読みください。
今まさに漏電ブレーカーが落ちて困ってるんです!
って人は↓の記事を読んでください。そういうときのハウツーを書いています。

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知っておきたい漏電の仕組み
漏電って超怖いです。
どのぐらい怖いかっていうと、余裕で死亡事故になるぐらい怖いです。感電にも火災にも発展するのが漏電です。漏電が原因で起きる事故は沢山あるのです。
で、漏電はどんな家にも起きる可能性があります。新築だろうが中古だろうが戸建だろうがマンションだろうが、電気を使って生活する以上は漏電の危険が常にあります。
ですが、漏電って何のことだか知ってるよ!って人は非常に少ないです。なんか危ない電気のアレでしょ?みたいな理解の人がとにかく多い。
もう1回言いますけど、漏電はどんな家にも起きる可能性があって、漏電火災みたいな災害は常に我々の身近にあるのです。それを防ぐにはどうするかというと、漏電に関する正確な知識を身に付ける以外に近道がありません。
というわけで、皆さんこの記事を読んで漏電の仕組みをご理解ください。前置きが長くなりました。さあ始めます。
まずは漏電の定義から
仕組みを解説する前に漏電の定義をおさらいしましょう。
漏電とは、電気が回路以外に漏れることを意味します。
辞書的な定義は以下のとおり。
ろうでん【漏電】
( 名 ) スル
機械の故障や電線の絶縁不良などのために、電気がもれること。大辞林 第三版より
この理解の前提として、普通なら電気は回路以外に漏れないんだよってことを強調する必要があります。ちょっと説明します。
電流の「行き」と「帰り」は同じ量
普通の回路の図を描いてみました。ブレーカーの先にコンセントがあって、その先に電化製品(今回は電球)が繋がっている図です。
電気には行きと帰りの道が必要なので、ブレーカーからもコンセントからも線が2本ずつ出ています。

これは大事なんですけど、上の図ではまだ電球のスイッチ(描いてませんけど付いてると思ってください)がOFFなので、白い線と黒い線に電気は流れません。電球の部分で白い線と黒い線が切れていて、お互いにくっついていないと思ってください。
電圧があるので電気としては流れたくて仕方ないんですけど、肝心の電線が繋がっていないから流れることができない状態です。
ここで電球のスイッチをONにすると、電球のところで白い線と黒い線がくっつきます。すると電気の道ができて、いきおいよく電気が流れ始めます。(これを電流と言います)

このときブレーカーの出入口で電流を測ってみると、黒い線と白い線に同じ量の電流があることが分かると思います。

この図だと電気の行き場所が他にありませんから、ブレーカーから出ていった電気は必ずブレーカーに帰ってくるのです。
もっと言っちゃうと、コンセントのところで測ろうが電球のところで測ろうが電流の値は同じです。それ以外に行き場所がないからです。
ブレーカー:出る電流 と 帰る電流 が同じ
ちなみに、以前の記事で「家庭のコンセントは交流である」って説明をしました。上の図の電源も交流電源ですから、実際は電流の値が変動しまくる(+と-が入れ替わりまくる)んですけど、それでも瞬間瞬間を考えると、電流の出る値と帰る値は同じだと思ってください。

電気が電球を点けているのに電流が消費されていない点に疑問を感じる方もいると思います。電球を点けるという仕事をしているのに何も失われないのはおかしいんじゃないの?っていう感覚です。
その感覚は大変正しくて、仕事をした以上は必ず何かが失われます。そうじゃないとエネルギー保存則が成り立ちませんからね。
ただ、電気の場合は電流じゃなくて電圧が失われるようになっているのです。ブレーカーの入口と出口の電圧を測ってみると、そこに電圧の差があるのを確認できるはずです。(電圧が消費されるっていう表現もまた正確ではないのですが)
電気が漏れないのは絶縁体の被覆のおかげ
電気がなぜ回路以外に漏れないかというと、ゴムなどの絶縁体で電線が被覆されているからです。
絶縁体というのは電気を通さない物質のことです。絶対に電気を通さない物質なんてものは存在しないので、電気を超通しにくい物質と言った方がより正しいです。
一般的な電源用ケーブルの場合、銅でできた電線をゴムで被覆し、その電線を複数本まとめてさらにゴムで被覆しています。

つまり、電気が流れている線の上に絶縁体が二重で乗っかっているので、電気としてはもう完全に逃げ場がないわけです。ブレーカーから出た電気はおとなしくブレーカーに帰るしかないのです。籠の中の鳥状態です。
絶縁体が損傷すると電気が外に漏れる⇒漏電
ところが、何らかの理由で絶縁体が損傷すると話が違ってきます。
下の図のように電線(銅線)が剥き出しになるとヤバいです。

上の図の状態だと露出した電線が空気に触れていますけど、実は空気も絶縁体なので、空気に触れているだけなら電気は外に出られません。
ただ、電圧がかかった電気っていうのはとにかく「流れたくて流れたくてしょうがありません!」って状態なので、電線に直接触れるような何かがあれば「ちょっと流れてみっか」ってな感じで流れてしまうのです。
例えば、屋根裏のゴミとか家の構造材なんかが直接電線に触れたらそっちに電気が流れてしまいます。

これが漏電です。
電線に触れたのが人体なら感電事故になりますし、
電線に触れたのがゴミなら発火⇒火災になります。
電線に直接触れたモノに電気が流れる = 漏電
知っておきたい漏電検知の仕組み
漏電が起きる仕組みはここまでの説明でバッチリだと思います。
次に、漏電を検知して遮断する仕組みについて説明します。
電流の「行き」と「帰り」が違うなら漏電
漏電が起きている状態をもう少し広い範囲で見てみましょう。
赤く囲った部分のケーブルが傷つき、そこに何かが接触して漏電していると考えてください。

このとき、全体の電流の量は1Aなんですけど、漏電した部分で0.05Aだけ電流が外に流れてしまっています。(数値は例えです)
その結果として、ブレーカーのところで行き帰りの電流の量が違っています。(下の図)

さっきから何度も言っていますけど、絶縁被覆が完璧なら電気は電線の外に逃げられません。普通は1Aが1Aのまま1周して帰ってきます。
ところが、絶縁被覆が破れて漏電の条件が整ってしまうと、電流の中の不届き者が「こっちにも道があるぜ!行ってみよう!」ってな感じで脱走してしまうのです。上の図でいうと0.05Aが脱走者に当たります。
これをブレーカーの視点から見ると、電気を送り出したときは1Aだったのに、0.95Aしか帰ってきていないことになります。100頭の羊を放牧したら95頭しか帰ってこなかったような感じです。
じゃあ残りの0.05Aはどこに行ったのかというと、既定のルートから外れたどこかに行ってしまった、つまり漏電したと判断できるわけです。
これがどういうことかというと、ブレーカー側で行き帰りの電流量を監視しておけば、道中で漏電しているかどうかが分かるということになります。
上の図で漏電の電流がとても少ない(0.05Aしかない)ことについて補足します。
これは大原則なんですけど、電気ってのは流れやすい方向に流れるものです。
電線は電気がメチャクチャ流れやすい素材でできているのに対して、人体や家屋は基本的に電気が流れにくいです。なので、電線の被覆が破れて電気の逃げ道ができたとしても、大半の電気は電線の方を選ぶのです。人体とかよりも流れやすいからです。
ただ、わざわざ人体や家屋に流れ込む電気も少数存在していて、上の図の場合はそれが0.05Aだということです。残りの0.95Aは電線を選ぶのです。通るのが楽だからです。
もし、人体が濡れていたり、家屋が金属製で電気を通しやすいような状況なら、0.05Aよりもたくさんの電流が漏電することになるでしょう。
漏電した0.05Aはどこに行くかというと、人体や家屋を通って最終的に地面(地球)に帰っていきます。地球っていうのはものすごく大きな電気容量を持っていて、行き場のない電気を無制限に引き取ってくれる凄い奴なのです。
漏電遮断ブレーカーで電流量を監視する
家庭には必ず漏電遮断ブレーカーってのがあります。

これは普通のブレーカーと違って、電線の行き帰りの電流量をジーッと監視しているブレーカーです。
出ていった電流と帰ってきた電流の数値が違っていたら漏電だと判断して落ちるようになっています。
具体的に言うと、一般家庭なら30mAの漏電で働くタイプが多いです。大きい施設だと50mAなんてのもあります。
この数値が小さければ小さいほど、漏電時に流れ出る電流を少なく抑えられるので安全なのですが、あまりに小さすぎるとちょっとした誤差で漏電ブレーカーが働く(停電する)という不便さが生じます。
安全性と利便性を比較衡量した値が30mA~50mAぐらいなんですね。
というわけで、漏電遮断ブレーカーが落ちたら家のどこかで漏電が起きている可能性が高いです。
それが電化製品からの漏電なのか、屋内配線の漏電なのか、そこまでは分からないんですけど、出ていった電流が帰ってこない(どこかに脱走しているらしい)、ということだけは分かるのです。
もし、この記事を読んでいる人で漏電遮断ブレーカーが頻繁に落ちるよって人がいたら、それはもう急いで対応してください。感電や火災に繋がる深刻な危険が迫っています。
↓具体的な対処法はコチラの記事をご覧ください。

まとめ:漏電は怖いので早めの対処を
いかがだったでしょうか。
漏電がどういう理屈で起こるのかを説明し、それをどうやって検知するのかについて説明しました。
おさらいになりますけど、漏電検知ブレーカーがは「回路上のどこかで電気が漏れてるよ」ということは教えてくれるのですが、「どこで漏れてるよ」という具体的な場所までは教えてくれません。
電線がある全ての場所で漏電が起こる可能性があり、感電や火災が起こる可能性があるのです。だから漏電ってのはとにかく怖くて、家屋におけるサイレントキラーともいえる存在なのです。
この脅威をどう避けるかというと、漏電の仕組みを理解し、電線の劣化などを気にしながら日々の生活を送るしかありません。
本記事を読んでくださった皆さんは、どうかご自宅の配線環境に注意を払ってみてください。