理系雑学

ちょっと理系な話~次元って何だろう~

次元とは

 

~前置き:このシリーズについて~

このカテゴリでは少し難しい理系の話を取り上げます。

特に、筆者自身がああ、そういうことか」と腑に落ちた概念を紹介しようと思います。

 

理学の話っていうのは、レベルが高くなるとどんどん抽象的になっていきます。

特に大学以降の数学物理学などは、抽象的なものを抽象的なまま取り扱う世界です。

筆者はそんなに頭がよくなくて、抽象的な話を抽象的なまま取り扱えません。
ファイル形式を「.抽象」から「.現実」に変換しないと読み込めないのです。

だから大学以降の数学などは全くお手上げで、入学して何度目かの数学の授業で「自分は数学の才能が無いなあ。工学(建築)にしてよかったなあ」と思ったのを覚えています。(まあ沢山留年するんですけど。)

大学以降の数学でつまずく人ってみんな筆者みたいなもんだと思います。

 

ただ、筆者の場合、その後も数学への興味はなんとなく燻ぶっていて、
社会に出てから数学系の本やコラムを読み漁ったりしました。

その中でああ、そういうことか」と腑に落ちた概念がいくつかあるので、
ここで取り上げたいと思って記事を書くわけです。

つまりこのシリーズでは、大学レベルの理学ができなかった筆者がナントカ辿り着いた自分なりの考えを紹介するわけです。

低レベルな筆者の脳で高レベルのものをフワッと攻略するので、逆に分かりやすいこともあるかと思います。よろしくお願いします。

ああ前置きが長い。

では始めますね。

次元って何だ

数学や物理の勉強をしていると次元という言葉にぶつかります。

これは日常にもよく登場する言葉でして、「次元が違う」とか「低次元な話」とかいう使われ方をしています。

それ以外にも「四次元ポケット」とか「異次元空間」とかSF的なニュアンスでも使われます。

ところがどっこい、次元について正確な説明ができる人って結構限られている気がします。

皆さんは次元って何?という問いに答えられますか?

今回は次元の意味について掘り下げたいと思います。

次元は”独立した要素の数”

まず結論から言います。次元というのは独立した要素の数です。

独立した要素ってのは、ほかの要素がどんな値をとっても代替できない要素のことです。

 

ある体系の中にAとBという2つの要素があって、どちらも好きな値をとれるもの(自由変数)とします。

ここで、Aがどんな値をとってもBの代わりにならない場合、AとBは独立しているといいます。

独立した要素が2つ(AとB)あれば、その体系は2次元です。

 

なんかよく分かりませんね。
ちょっと具体的に見てみましょう。

独立した要素とは

2次元と3次元のグラフ軸を準備しました。

グラフ例1

左側のグラフは横・縦の2次元、右側のグラフは横・縦・奥行の3次元です。

 

これは一番大事なので魂で感じてほしいんですけど、

「横」が「縦」や「奥行」の代わりになることはできません。

「横」に1000000進んでも「縦」に1進んだことにはならないのです。

 

横は横だし、縦は縦なんです。奥行も同じです。

こういう感覚を独立といいます。

上の例で言うと、横と縦が独立しているわけです。

 

ところで、ここでは「横・縦・奥行」を例に挙げていますけど、
要素の名前は別になんでもいいです。

「要素A・要素B」とか「身長・体重・腹囲」でもいいです。

要はお互いが独立していればそれでいいのです。
ちなみに「要素A・要素B」は2次元、「身長・体重・腹囲」は3次元になります。

次元の要素は何でもよい

次元を形作るのは非常に簡単です。
「この要素で体系を作る!」とあなたが勝手に決めればいいだけです。

要素同士が独立していれば次元は上がります。
要素同士は全然関係ないものでも結構です。

例えば↓こんな体系を作ることも可能です。

・あなたの所持金

・今日の降水量

・昨日売れた靴の数

・私が食べた豚肉の重量

この場合、あなたの所持金と私の豚肉には何の関係もありません。

あなたが100億円持っていても、それが私の豚肉の代わりにはなりません。

これらはお互いに独立した要素で、それが4つあるので、この体系は4次元です。

こんな感じで次元を持つ体系というのはいくらでも作ることができます。

5次元を考えたければ4次元に1つ要素を足せばいいだけです。

例えばマツコ・デラックスの体重とかどうでしょう。

・あなたの所持金

・今日の降水量

・昨日売れた靴の数

・私が食べた豚肉の重量

・マツコ・デラックスの体重

ほら。立派な5次元のできあがりです。

ただ、こんな体系を作っても何一つ意味がないのでみんな作らないだけなのです。

 

次元が違うと計算ができない

次元が違うってのは非常に大きなことです。

一番大きな理由は次元が違うと計算できないっていう点です。

例えば(2,5,9)と(1,3,0)を足し算することは簡単です。

各要素をそれぞれ足し算して(3,8,9)です。3次元同士なら足し算できるのです。

ところが(2,5,9)と(1,3)を足すことはできません。

なぜかというと3番目の要素が定義すらされていないからです。

これは分かってほしいんですけど、
(1,3,0)と(1,3)は明らかに別物です。

(1,3,0)というのは、数字の入れ物が3つある状態です。
左の入れ物には1が、真ん中には3が、右には0が入っています。0だって数字です。

(1,3)っていうのは、数字の入れ物が2つしかない状態だと思ってください。

だから、(2,5,9)と(1,3)を無理やり足そうとすると、(3,8, )←ここで計算が止まってしまいます。

なんとなく(3,8,9)にしたくなる気持ちも分かりますけど、それは(1,3)に勝手に入れ物を増やして0を入れたことになるので、数学的には違反です。

(1,3)は(1,3)であって、勝手に(1,3,0)になることはあり得ないのです。

次元が違うというのは要素同士の計算ができないことを示していて、

要するに関わる機会すらない状態なのです。

四次元ポケットの弊害

数学科の人と話すと、
5次元とか10次元とかいう言葉が簡単に出てきます。

次元のことを理解していない人はこの言葉だけでクラクラしてしまうのですが、

実はこれ、大したことじゃありません。

ちょっと語弊があるかもしれませんけど、

数学者が考えている次元の要素には特に意味がないのです。

 

高校数学までの理解って

2次元は平面(縦・横)

3次元は空間(縦・横・高さ)ですよね。

次元の要素に「縦・横・高さ」っていう名前がついていて、それぞれちゃんと意味が分かります。

 

その考え方を延長した時、4次元になると、高さの次は何なの???ってなります。

縦・横・高さの次って何なんでしょう。

3次元=縦・横・高さ

4次元=縦・横・高さ・?

現実世界は縦・横・高さで成り立っているので、その次の要素って具体的に想像できませんよね。だから、4次元と聞くとそこで思考がストップしてしまいます。(筆者がそうでした)

ましてや5次元とか10次元なんて、5個目や10個目の要素は何なんだよ!!って思って受け入れることすらできません。

だから数学科の人が多次元の話を始めると、こいつらの頭の中はどうなってるんだろう…ってな感じで脳みそがショートしてしまいます。

 

ですが先に説明した通り、次元の要素ってのは互いに独立していればそれでよくて、

要素自体の意味は全くどうでもいいのでした。

 

だから、4次元や5次元の話をするときに

「4つ目の次元は何なんだろう…」とか考える必要なんて実は無いのです。

グラフにできなくてもいいのです。

それどころか、3次元の要素が縦・横・高さである必要すらないのです。

 

実際、数学科の人が5次元について考えるときは

「要素1・要素2・要素3・要素4・要素5」ってな感じで次元の体系を考えます。

それぞれの要素の名前や意味なんて考えなくていいのです。味気ないですけど。

 

とにかく、お互いに独立した要素が5個並べば5次元です。10個並べば10次元なのです。

 

次元を増やすならその次元の意味を考えないと…みたいな思考に陥っちゃっている人は多分結構多いです。

これはやっぱり中学までの授業で

「2次元は平面」「3次元は空間」「3次元は縦・横・高さ」

みたいな教え方をしているのが大きいのだと思います。

 

さらに

ドラえもんが「4次元空間は3次元空間に時間が加わったものだよ」とか言い切っちゃったもんだから、

次元を増やすならその次元の意味を明示しなきゃいけない!みたいな、

そういう観念がなんとなく皆に植え付けられているのだと思います。

 

4次元空間の四角形

そんなわけなので、4次元だろうが100次元だろうが、要素の数だけ数字を書いてしまえば我々もその次元を取り扱えるのです。

例えば4次元空間に浮かぶ四角形を考えてみましょう。

4次元空間に浮かぶ四角形て、なんかインパクトあるなあ。

字面だけ見るともうワケワカランの極地みたいな存在ですけど、実はぜんぜん難しくありません。

 

まずこれは大事なんですけど、

4次元空間をビジュアル的に想像しようとするのはやめてください。

難しすぎますから。

ホンマモンの化け物(数学者)は頭の中に10次元空間を飼っているとか言いますけど、
大多数の一般人には3次元が限界です。

 

ただ、四角形ってのは分かりますよね。

点が4つあってそれが直線で結ばれていれば四角形です。

もっとレベル高い話になると直線じゃなくて曲線とかも考え出すみたいですけど、
私のレベルじゃ追いつけないので話しません。

また、本当は同一平面上に4点が無いと平面の四角形はできませんけど、
それも今回は無視します。

点が4つあればたぶん四角形は作れるのです。とにかくそれでいいのです。

さあ始めましょう。

 

2次元空間の四角形ってのはこういう↓ものです

2次元のグラフ

 

3次元空間ならこう↓です

3次元のグラフ

 

こんな感じで、とにかく点が4つあれば四角形ができます。

 

では、4次元空間の四角形はどうなるでしょうか。

 

こんなもん↓↓でいいんです。

 

4次元のグラフ

 

繰り返しになりますけど、

4次元がどんな空間かってのは描写できません。

正確に描写するのはたぶん無理です。

 

ただ、点が4つ決まれば多分そこには四角形があるのです。

それでいいのです。

 

もう一度この画像を見てください。

4次元のグラフ

点が4つ決まっていますね。(点A~点D)

 

今までのお約束に則れば、

点が4つあるのだからそこにはたぶん四角形ができるはずです。

グラフ上は表現不可能ですけど、そこには四角形があるはずなんです。

 

それでいいんです。

 

5次元空間の四角形

ちょっと考えを進めて5次元空間に浮かぶ四角形も考えてみましょう。

これもすごく難しそうに見えますけど、考え方は全く同じです。

点が4つあれば四角形はできますから、
こうやって↓点が4つ決まっていればそれでいいのです。

点A(5,10,8,0,-5)
点B(5,10,8,0,0)
点C(5,10,8,5,-5)
点D(5,10,8,5,0)

 

5次元空間の四角形なんてどういう状況か想像もできませんけど、
そういう描写はできないもんだと切り捨てましょう。

大切なのは、グラフ化を諦めて点のデータだけに絞れば我々凡人でも多次元を扱えるということです。

数学はそうやって発展してきたのです。

まとめ:宇宙は11次元?

お分かりいただけたでしょうか。

4次元だの5次元だの言っても、別にそれ自体が高尚な存在なわけではないということは伝わったかと思います。

10次元だろうが20次元だろうが勝手に定義すればいい話ですし、グラフ化しなくていいなら我々だって扱えるのです。

 

ところで、今の物理学会では

宇宙は実は11次元あるんじゃないか

みたいなことを言っています。

今私が知っている宇宙の体系は「縦・横・高さ」の3要素だけですけど、
それがたぶんあと8つあるんだよということです。多くない?

 

表現を変えると、

宇宙は以下の11要素で成り立っているということです。



高さ
要素4
要素5
要素6
要素7
要素8
要素9
要素10
要素11

要素4から要素11は物理学者が頑張って見出した何かなんですけど、もしかしたらそのうちの一つは「時間」かもしれません。

筆者よりずっと頭の良い人たちが言っていることなので、たぶんその方向で合っているんだと思います。

 

ただ筆者は今のところ3次元(縦・横・高さ)しか知覚できていないので、

実はあなたが知らないところにあと8つも次元があるんだよーとか言われても、

そいつぁすげえや!

と思いながら3次元っぽい空間で生きるだけなのです。