この記事は断熱に関する基本的なことを説明する記事です。
Contents
まえがき:断熱って重要だけど分かりにくい
皆さんは断熱のことを知っていますか?
断熱って何のことだか知っていますか?
建築には断熱という概念があります。
これから説明しますけど、断熱性能の品質は建物の良し悪しに直結します。
断熱って超大事なんです。
建設業界もここ数十年で断熱の重要性に気付いてきました。
注文住宅のCMを見ると高断熱とか断熱性能日本一とかいう文句が踊っていますよね。建売住宅を見ても「断熱なんて普通ですよ。やってますよ」みたいな態度の業者が多いです。
断熱は最近の建築界のホットワードなのです。
ですが、最近は断熱っていうワードだけが独り歩きして、その理解が浸透していないようにも思います。
住宅を建てるお客さんはもちろん、業者自身も断熱すると何がどうなるのかをイマイチ分かっていない節があります。
これは断熱が日本ではまだまだ未熟な概念で、分かりやすい説明とか知見が不足していることに起因すると思います。
そのへん、業界全体の感じが過渡期というか、微妙なバランスの上に成り立っている様子なので、筆者は皆さん自身が断熱を勉強すると相当得をすると考えています。勉強しないと損をする(ハズレを引く)と言い替えてもいいです。
というわけで、今回は断熱の基本的な部分を説明するべく導入的な記事を書くことにしました。
簡潔に行きます。よろしくお願いします。
断熱は家を断熱材で覆うこと
断熱ってのは家全体を断熱材で覆うことです。
どのくらい覆うかっていうと、そりゃもう丸ごとです。あなたの居住空間を丸ごと覆うのです。それが断熱です。
断熱材は熱を通しにくい素材
断熱材というのは、簡単に言うと「熱を通しにくい素材」のことです。
表面を40℃に熱しても裏面は30℃です。みたいなのが断熱材です。
繊維系・自然素材系・発砲プラスチック系の3種類に大きく分けられます。
主要な断熱材の一覧
現在使われている主要な断熱材を一覧にしてみました。
ロックウール | 繊維系 |
グラスウール | 繊維系 |
セルロースファイバー | 繊維系 |
羊毛 | 自然素材系 |
フェノール | 発泡プラスチック系 |
ウレタン | 発泡プラスチック系 |
ポリスチレン | 発泡プラスチック系 |
素材個別の説明は長くなるので控えます。
いつか別の記事で詳しくお伝えできるといいなと思います。
断熱材の種類を過度に気にするのは×
1つだけ大事なことを言っておきます。
断熱材の種類によって性能に高低はあります。もちろんあります。
ただ、断熱性能が低いものでも厚く入れれば断熱性能を確保できますので、断熱材の種類だけを過度に気にするのはやめてください。
グラスウールも厚けりゃ暖かいですしウレタンでも薄けりゃ寒いです。
グラスウールにはグラスウールの、ウレタンにはウレタンの良さと悪さがあります。うちの断熱はグラスウールだからウレタンよりレベル低いんだな…って考え方は早計です。
覆う方法に種類がある:外断熱とか内断熱とか
最初に言いましたけど断熱の基本はあなたの居住空間を丸ごと覆うことです。
ただ、居住空間の捉え方にはいろいろな種類があって、どこまでを断熱材で覆うかは工法によって違ってきます。外断熱工法とか内断熱工法とか聞いたことありませんか。大雑把に言うと以下の感じです。


この記事はイントロなので詳しく踏み込みませんけど、こういう工法もやっぱり居住性とコストに影響を与える部分なので、メリットデメリットをご自身で勉強してみてください。
断熱の目的は「家の魔法瓶化」
断熱材で居住空間を覆うことによって、あなたの家が魔法瓶と同じような状態になります。
魔法瓶の水筒に冷たい飲み物を入れると炎天下で持ち歩いてもヌルくなりにくいですよね。
これと同じで、断熱レベルの高い家に冷風(冷房)を入れると、涼しい環境を長く維持できるのです。真夏の環境下でもです。
これが断熱の目指すところなワケです。

魔法瓶の水筒は、水筒の壁の中が真空になっています。真空はものすごく高い断熱性を持っているので、魔法瓶の断熱性はものすごく高いです。
家の場合、壁の中を真空にするワケにはいきませんので、真空の代わりにグラスウールとかを詰めて断熱を図るわけです。
もしも壁の中を真空に保つ技術ができたら、今の家とは比べ物にならないような断熱性を持つ家ができるかもしれません。メチャクチャ高そうですけど。
断熱のメリット:省エネにも住環境保持にも有効
断熱の方法については概ね説明したので、次は断熱のメリットに移ります。
先に言っておきますと、断熱のデメリットはほぼありません。メリットだけです。
そのつもりでお読みいただき「断熱無しの住宅なんてありえねえな」と思っていただけると嬉しいです。
厳密に言うと、断熱が浸透したことで内部結露という不具合が世に生じてしまいました。
ただ、今現在は内部結露の防止策が確立されていて、断熱しつつ内部結露を防ぐことは当たり前にできています。なので、内部結露を断熱のデメリットとして挙げることはしません。今の新築住宅で内部結露が起きたらそれはただの施工不良(壁の気密性が確保できていない)です。
①空調が効きやすくなる
さっき少し説明してしましたけど、断熱が行き届いた家は空調の効果が長持ちします。魔法瓶効果によって外気の影響が室内に届きにくいからです。
これにより、少量の空調でも快適な居住空間を確保できるようになるため、空調動力の削減につながります。つまり省エネ効果があって電気代も安くなるのです。
家は長く住むものですから、月々にしたら僅かな額でもトータルコストで見ると大きな額になります。
②温度ムラが少なくなる
①にも通じることですけど、外気の影響を受けにくいために家全体で温度ムラが少なくなる効果があります。
古い家の脱衣所とかトイレとかって冬はものすごく寒いですよね。
あれは脱衣所やトイレの断熱ができていなくて、それらの空間が実質的に外と同じだからです。
暖房されたリビングからそういう場所に行くのは家の中から外に出るのと同じなので、寒く感じるのは当たり前ですね。
逆に言えば、脱衣所やトイレも丸々一緒に断熱材で覆ってしまえば、リビングからの暖気が外からの寒気に勝ってくれたりして、無断熱の家ほど温度差を感じなくなるのです。
これには大きいメリットが2つあります。
- ヒートショックを防げる
- 結露を防げる
順に解説します。
ヒートショックを防げる

自宅のお風呂場で人が亡くなる事故が非常に多いですけど、その多くはヒートショックと呼ばれる現象によるものです。
寒いところ(脱衣所)から暖かいところ(風呂場)に急に移動することで血圧に急激な変動が生じて心筋梗塞や脳梗塞を起こすというものです。
これは要するに脱衣所と風呂場の温度ムラが原因ですので、断熱を高めて温度ムラを無くすことが予防になるのです。
また、ヒートショックのような過激な例でなくとも、家の中に寒いところがあるのは健康に非常に悪いことが分かりつつあります。温度ムラの予防は身体の健康維持にもつながるのです。
結露を防げる

結露の原因はほとんどが温度ムラです。
家の中に冷たい場所がなければ原理的に結露は起きないのです。
冷たい場所をゼロにするっていうのはたぶん無理ですけど、少しでも温度ムラを減らすことが結露の改善につながるのは間違いありません。
結露は住環境に深刻な影響を及ぼすほか、建物の寿命自体を縮める原因の1つでもあるので、これを少しでも改善できるっていうのは非常に大きなメリットです。
補足:結露
結露に関しては「暖房すると結露する」というイメージが先行しており、結露を防ぐために暖房を控えたり除湿したりする家庭が非常に多いです。これは本質的な解決方法ではありません。
結露のメカニズムとして冷たい場所があるから結露するわけですから、結露を本当に防ぎたいなら冷たい場所を無くせばいい=全館暖房すればいいのです。本質的な解決方法はこれなのです。
ただ、断熱がテキトーな状態で全館暖房するのは効率が悪すぎますから、断熱が悪い家は暖房を我慢するしか対策がないのです。本当に正しい結露対策は断熱してから→全館暖房なのです。
結露は建築の大敵であり非常に重要なテーマですので、また別記事で解説できたらいいなと思っています。
まとめ:断熱がよければ夏も冬も快適
以上、断熱の意味と意義について足早に説明しました。
断熱の重要性については最低限ご理解いただけたと思いますので、これから家をお考えの方は断熱にとにかく注目してやってください。
断熱には本当にすごい効果があります。ぜひハウスメーカーの体験会とかに参加してその効果を実感してください。
「俺の実家は無断熱で問題なかったし、新居も断熱はテキトーでいいや」っていう考えだけは捨てていただけると幸いです。この記事を書いた甲斐があります。よろしくお願いします。
読んで分かっていただけたと思いますけど、断熱って非常に重要な概念である反面、とてもややこしく難しい概念です。そのイロハを1記事で説明するのはとても無理ですので、詳しい部分について相当飛ばしてきたことをご容赦ください。