第一種換気を謳うハウスメーカーが増えています。
住宅展示場なんかにいくと、結構な数の企業が第一種換気を推してきます。
「うちは第一種なんです!」と胸を張る営業さん、多いですよね。
ところで、第一種換気がどういうものなのか皆さんご存知でしょうか。
露出の割にはあまり一般に浸透していないように思います。
営業さんは「第一種だから凄いんですよ。凄いでしょう。入れましょう」みたいな雑な説明をするばっかりで、他の方式と比べて何がどう凄いのかはあまり聞き出せません。
第一種換気はメリットを沢山持っていますけど、少ないながらデメリットもあります。後悔しないためにも、第一種換気のメリットデメリット、知識として持っておきましょう。
本記事では、そもそもの換気の意味から始めて、それぞれの換気設備の特徴を語ろうと思います。
第一種換気の特徴だけ見たいよって方は目次からジャンプしてご覧ください。よろしくお願いします。
なお、筆者は第一種換気について肯定的で、広く普及するべき設備だと思っています。
Contents
高気密化で換気が重視されるように
換気の効果は沢山あります。ザッと思いつくだけでもこんな感じでしょうか。
- 酸素の補充
- 二酸化炭素の排出
- 湿気の排出
- シックハウスの予防
- 室内温度の調整

換気の重要性については誰も異論がないと思いますけど、実は昔よりも今の方が換気が重要だってのは意外と知られていません。
昔の家はスカスカだったから窓なんか開けなくても隙間風で換気できていたのです。
設計者が換気のことを考えなくても、施工の段階で隙間が空くので結果オーライだったのでした。
ところが、近年の高気密・高断熱化で隙間風が無くなっちゃって(それ自体はいいことなんですよ!)、しかも新建材の流通でシックハウスも問題になったりしているから、設計者も積極的に換気のことを考える必要が出てきたのです。
今まで「大きい窓をつけておけばいいでしょ」で済ませていたところが、「ちゃんと風の流れを考えないと…」というアプローチに変わってきたのです。
「受け身の換気」の時代が終わり「攻めの換気」の時代が来たとでも言いましょうか。とにかく、換気(換気設備)の重要性は年を追うごとに増す一方なのです。
換気設備の法的設置義務
法的な部分をお話しします。
大原則として、居室には機械換気設備を設置する義務があります。
居室というのは「人が継続的に居座る可能性のある部屋」のことです。
居室である | 居間・台所・食事室・寝室 など | 換気設備の設置義務あり |
居室ではない | 便所・洗面所・浴室・納戸・玄関 など | 換気設備の設置義務なし |
建築基準法施行令
第二十条の八 換気設備についてのホルムアルデヒドに関する法第二十八条の二第三号の政令で定める技術的基準は、次のとおりとする。
一 居室には、次のいずれかに適合する構造の換気設備を設けること。
というわけで、設置義務が無い部屋、たとえば廊下なんかに換気システムを入れているハウスメーカーは、建築基準法の規定よりハイスペックな換気を実装しているわけです。評価してあげるべきです。
この規定に基づいて入れる換気設備は、一般に「24時間換気システム」とか呼ばれています。
義務になったのは2003年の法改正から
読者の皆さんは覚える必要がない部分ですけど、せっかくなのでついでに説明します。
ところで、古い住宅には居室に換気設備が無いよって建物もあるでしょう。皆さんの実家には換気システムが付いているでしょうか?半分ぐらいの人は付いていないと答えると思います。
それもそのはずで、24時間換気システムが義務付けられたのは2003年7月の建築基準法改正からなのです。
ですからそれ以前の建物、具体的には築17年以上経っている建物については、換気設備が無くても違反ではないのですね。
古い住宅にも換気設備を設ける必要はあった
ただ、そんな古い住宅でも、一部の部屋には換気設備を設ける義務がありました。
- 窓が少ない部屋
- 火気を使う部屋(台所・風呂など)
これらの部屋には換気設備を設ける必要がありました。昔の家だからと言って換気設備ゼロってことは有り得ないんですよ…って話です。
建築基準法
第二十八条
2 居室には換気のための窓その他の開口部を設け、その換気に有効な部分の面積は、その居室の床面積に対して、二十分の一以上としなければならない。ただし、(中略)換気設備を設けた場合においては、この限りでない。
3 (前略)建築物の調理室、浴室その他の室でかまど、こんろその他火を使用する設備(中略)換気設備を設けなければならない。
換気の種類~自然換気設備と機械換気設備~
ここからは換気設備の種類と長所・短所をご紹介します。
換気設備には以下の種類があります。
自然換気設備 | 自然換気 |
機械換気設備 | 第一種換気 |
第二種換気 | |
第三種換気 |
順番に説明します。
自然換気設備とは
自然換気設備というのは、超簡単に言えば煙突です。

暖まった空気が上昇する性質を使って自然の力で換気を行うものです。
意外と多くの換気量を確保できて侮れないのですが、換気量をコントロールしにくいという欠点があります。
シックハウス対策が叫ばれる昨今、換気したいときにできない場合があるというのは致命的です。
先述のとおり、2003年の法改正以降は機械換気設備の設置義務がありますから、自然換気設備を積極的に設ける理由はほとんどありません。
随時換気量を機械換気設備で確保したうえで、常時換気量の増大のために補助的に用いる、というのはあるみたいです。
第三種換気は安くてスタンダート
第三種換気は排気を機械で行い、給気は自然任せにする方式です。

もちろん自然よりも機械の方が力強いので、排気が主体の換気方式だと言えます。
室内の空気は「機械に吸われるぅ!」ってな感じで一直線に排気口に向かおうとします。室内の空気を隣室に漏らしたくない場合に相性が良い換気方式でして、トイレや台所などはこの方式が推奨されます。
実際は機械換気の中で1番簡易な方式ですから、トイレ台所に限らず色々なところで用いられています。っていうか、第一種換気を謳っていない居室はほとんど第三種換気だと思ってもいいです。
第二種換気は特殊用途向け
第二種換気は給気を機械で行い、排気は自然任せにする方式です。

第三種とは真逆の関係で、こちらは給気が主体の換気方式です。外の空気を機械のパワーで室内にガンガン押し込みます。
室内の空気は「押し出されるぅ!!!」ってな感じでどこからでもいいから出ていこうとします。隙間を見つけてはところてん式に押し出されていきます。
排気口から排気しきれなかった空気が壁の中などに侵入して結露したりするので、一般住宅ではほとんど使われません。
隣室からの空気の流入を防ぎたい場合に相性が良く、例えば病院の手術室なんかで限定的に使われている方式です。
第一種換気はハイコストハイパフォーマンス
第一種換気は給気と排気の両方を機械で行う方式です。

空気の入口と出口の両方を機械で制御するため、換気量を完全にコントロールできる点が最大の特長です。
給気側にフィルターを設けて花粉やダストの流入をカットするなど、第三種や第二種では届かなかった痒い所に手が届くのがメリットです。

一方、機械設備やダクトの数が単純に増えますからイニシャルコストが高いですし、フィルターの手入れ・ダクトの清掃などランニングコストも高くなりがちです。
第三種換気と比べてパフォーマンスは良いですが、そのぶんコストもかかるということを覚えておきましょう。
まとめ:換気設備はよく考えて選択を
いかがだったでしょうか。
換気設備の設置義務と、それぞれの換気方式のメリットとデメリットを簡単に述べました。
第一種換気は住宅にも普及してきました。
そのメリットは結構大きくて、健康で快適な生活を求めるなら第一選択になるでしょう。
筆者としては、ハウスメーカーが第一種換気に対応しているなら(施工事例があるなら)勧められるままに第一種換気を採用していいと思います。
ただ、コストがかかるのは間違いないので、施主がそのメリットとデメリットをよく理解して選択することが肝要になると思います。
適切な換気を意識して健康な生活を送りましょう。