理系雑学

飛行機からはどこまで見える?~色々な高さから計算してみた~

こんにちは。筆者です。

飛行機は速いですよね。

このまえ飛行機に乗る機会があったのですが、
羽田空港を飛び立って5分ぐらいで霞ヶ浦(茨城県の湖)が見えてきて飛行機速すぎるやろ…ってなりました。

そこでふと気になったのが、飛行機からはどのぐらい先まで見えるんだろうってことです。

なんとなく自分で解けそうな難易度なので、計算してみることにしました。
本記事では“飛行機から見える範囲”をキッカケに色んなことを計算します。

計算方法について

まずは計算の方法をザッとご説明します。
中学数学でついて来れるレベルなので頑張って読んでください。
どうしても数学は嫌だよ!って人は図だけでも見てください。少し分かると思います。

使うのは三平方の定理だけ

今回使うのは三平方の定理です。

直角三角形の斜辺とその他の辺でこういう関係が成り立つっていうアレです。

三平方の定理

この定理の最強なところは直角三角形の2辺の長さが分かれば他の1辺が計算できる点にあります。

これは本当にすごいことで、測量なんかでもよく使われています。三角測量といいます。余談です。

飛行機の高さと地球の半径で直角三角形を作る

これはもう図示した方が早いので↓をご覧ください。

地球と飛行機の図
  • 地球の半径
  • 飛行機の高さ
  • 見える範囲

この3つを使って直角三角形を作ることに成功しました。

直角三角形ができた

今回求めたいのは飛行機から見える範囲なので、緑の線がターゲットになります。

で、三平方の定理を使えば青の線と赤の線を使って緑の線の長さが分かるのです。

 

つまり、地球の半径飛行機の高さが分かれば見える範囲が分かってしまうのですね。

数学ってすごいなーと思います。

緑の線青の線の交点は必ず直角になります。円の接線円の半径は必ず直角になるからです。そういうものなのです。

 

地球の半径は6378㎞ 飛行機の平均高度は10㎞

地球の半径飛行機の高さが分かればこの問題は解けると言いました。
これらの数値はインターネットから拾います↓

地球の半径=6378㎞
飛行機の高さ=10㎞ (これが平均高度っぽい)

これを先ほどの直角三角形に当てはめるとこうなります。これで計算の準備ができました。

直角三角形(長さ当てはめ後)

すこし脱線:地球は楕円型?

上に挙げた地球の半径は赤道断面での長さです。

実は地球は楕円型なので、どこで切るかで半径が変わってきます。最大20㎞ぐらい違います。

なぜ楕円型かというと、高速回転(自転)によって引き延ばされているからです。

地球の楕円性

こうした事情から「地球は楕円型だ!」と叫びまくる人がいますけど、6378㎞に対する20㎞って誤差の範囲なので、「楕円だ楕円だ!!」と叫びまくるのはどうなのかなーと個人的には思っています。正しいですけど正しくないというか、要らん誤解を生むというか。(上の図もかなり誇張して楕円にしています)

飛行機から見える範囲

さて、計算のお膳立ては全て済んでしまいました。
ここからは淡々と計算するだけです。三平方の定理に当てはめてサクッとやります。

直角三角形(長さ当てはめ後)

飛行機から見える距離

6378)^2 + ^2 = (6378 + 10)^2

^2 = (6378 + 10)^2 - (6378)^2

^2 = 40806544 - 40678884

^2 = 127660

 ≒ 357

結果を発表します。

飛行機から見えるのは約357kmの地平です。

 

…広いッッッ!!!!!

 

飛行機から見える半径は超大きかった

予想外の広さに筆者は動揺を禁じ得ませんでした。
せいぜい70㎞とかかなーとか思っていたんですけど、全然違いました。広いッ!!!

357㎞というと東京から京都までの距離にほぼ相当します。
羽田空港の真上を飛行機が飛んだら京都まで見えるのです!
予想よりずっと遠い!飛行機凄い!

357㎞を地図で示すとこんな感じ↓

357㎞の円

そりゃあ霞ヶ浦もスグ見えますよね!って話です。

霞ヶ浦どころか琵琶湖が見える勢いです。

一応補足しますと、実際に京都まで見通すことは難しいです。空気中の塵が光を反射して霞んでしまうからです。357㎞ってのは理論上の話だと思ってください。

オマケ:人・超高層ビル・東京タワー・スカイツリーの場合

せっかくなのでもう少し計算してみましょう。
皆さんがイメージしやすい数値を4つ挙げました。

人の身長 0.0016㎞ (160㎝。女性の平均身長です)
超高層ビル 0.060㎞ (60m。建築基準法的に言う高層と超高層の境目です)
東京タワー 0.333㎞ 
スカイツリー 0.634㎞
計算用直角三角形

地平線までの距離は4.5km

まずは人の身長から見える範囲を計算します。

つまり、我々が普段見ている地平線の距離です。

人の身長から見える距離

6378)^2 + ^2 = (6378 + 0.0016)^2

^2 = (6378 + 0.0016)^2 - (6378)^2

^2 = 40678904 - 40678884

^2 = 20

 ≒ 4.5

というわけで、地平線の距離は約4.5㎞なのでした!

近ッ!

さっきとは打って変わって近いです。
地平線ってもっと遠くにあるもんだと思っていました。

地平線には徒歩1時間で到達できます。ゆっくり走って30分ぐらい。地平線って近いですねー。

ちなみに、身長170㎝だと4.65㎞先まで見えます。
身長が10㎝違うと地平線が150mぐらい遠ざかることになります。

 

サンシャイン60は春日部から見える

超高層ビルも計算してみましょう。

超高層ビルから見える距離

6378)^2 + ^2 = (6378 + 0.060)^2

^2 = (6378 + 0.060)^2 - (6378)^2

^2 = 40679649 - 40678884

^2 = 765

 ≒ 28

というわけで、超高層ビルの屋上からは28㎞以上先まで見渡せるのでした。

逆に言うと、28㎞離れた地点からも超高層ビルは見えるわけです。

28㎞というと春日部から池袋ぐらいの距離なので、池袋の超高層ビルは春日部から見えることになります。サンシャイン60などは超余裕で見えるはずです。(遮蔽物が無いというのが大前提です)

東京タワーとスカイツリーで見える距離が1.5倍違う

最後に東京タワーとスカイツリーを計算して終わりにします。

東京タワーから見える距離

6378)^2 + ^2 = (6378 + 0.333)^2

^2 = (6378 + 0.333)^2 - (6378)^2

^2 = 40683131 - 40678884

^2 = 4247

 ≒ 65

スカイツリーから見える距離

6378)^2 + ^2 = (6378 + 0.634)^2

^2 = (6378 + 0.634)^2 - (6378)^2

^2 = 40686971 - 40678884

^2 = 8087

 ≒ 90

というわけで、

東京タワーからは65㎞

スカイツリーからは90㎞先の地平線が見えるのでした。

意外と差が付かなかった印象です。
もっと桁違いの差を期待していたのですが。

霞ヶ浦からも東京タワーはギリギリ見えるようです。スカイツリーなら余裕で見えるかも。そう考えるとスカイツリーはやっぱり凄いですね。

どちらも1番上からの眺めの話です。展望台はもっと下ですから悪しからず。

まとめ:意外と遠くまで見えたり見えなかったり

今日の計算結果を地図にまとめました。

見える範囲まとめ

東京タワーとスカイツリーの位置は考慮していません。ぜんぶ皇居からの距離で描いています。皇居にスカイツリーがあったらこの辺から見えるんだなーと理解してください。

 

筆者的に意外だったのはこれ↓です。

  • 飛行機から見える範囲、広すぎ
  • 地平線までの距離、近すぎ
  • 東京タワーとスカイツリーの差、小さめ

まあ計算やってて楽しかったです。飛行機すごい!数学すごい!ってことで。ではまた。